2013年6月29日土曜日

ギャランフォルティス・ラリーアート 「逃げ足抜群というのは立派な性能だ」

  深夜の幹線道路を走っていると、ガラガラの道路なのにやたらと車間を詰めてくるクルマがたまにいる。信号が多い区間だとやたらと纏わりついてくるくせに、しばらく信号がない区間になって、さあ走ってやるよと思ったら全然付いてこなかったりして拍子抜けしたりもする。中にはドライバーが明らかに若くて、軽自動車を雨が降っている中でホイールスピンさせながらも「必死」で走ろうとする迷惑なヤツもいる。

  日本の自動車販売の大多数を占めるクルマはリアサスが独立式ではないので、そういうクルマが雨の中で無理な疾走をしているのを見ると、すぐに近くから離れたいという欲求に駆られる。スローダウンしてしまえばいいのだが、そういうヤツは先に行かせると意味不明にノロノロ走り出すので始末が悪かったりする。高速道路で追い越しておいてから90km/hくらいで走り始める輩に似ているかもしれない。

  速いクルマなんてそんなに興味はないのだけど、こういう「迷惑行為」への防衛手段としての抜群の加速性能を持っているクルマは魅力だ。面倒なクルマがいたらさっさと信号がないセクションで逃げきってしまえばいい。乗り出しで400万以下で買えるクルマでこの手の性能を有するモデルは探せば今でも意外に多い。

  輸入車だと・・・①ゴルフGTI(211ps&車重1400kg) ②ポロGTI(179ps&車重1210kg) ③ミト-クアドリフォリオ-ヴェルデ(170ps&車重1250kg)

  国産車だと・・・①ギャランフォルティス・RA(240ps&車重1580kg) ②MSアクセラ(264ps&車重1450kg) ③WRX STI specC(308ps&車重1420kg) ④86/BRZ(200ps&車重1470kg)

  輸入車勢のほうが比較的に小型のボディで、車幅からくる心理的な圧迫感は少なくて、用途としては向いているかもしれない。だがここは初動加速に優れる(信号が変わったらズバッといける)AWDの三菱かスバルを選択したほうが「安心感」が増すように思う。ただ「WRX STI」はスバルブルーと仰々しいリアスポイラーで、大人げない加速をするのもちょっと小っ恥ずかしい。スバル自慢の究極のショートストロークから繰り出される超絶レスポンスで軽ターボをぶち抜くなんて、人道的に許されるのか・・・。

  ギャランフォルティスRAはもっと評価されてもいいクルマだと思う。新車でたったの350万円(中古なら3年落ちで200万円以下!)しかしないが、アウディのクワトロと同等以上の性能があるのだから、これはお買い得に間違いない。フロントマスクも専用設計でカッコいいし、ランエボのベース車両なのでサスもいいものが使われている。敢えて欠点を上げればハッチバックもセダンもリアデザインがイマイチかな・・・。



  

 

2013年6月26日水曜日

トヨタSAI 「消えるトヨタに名車あり・・・」

  自他ともにクルマ好きを自認するBさんの自慢の愛車は・・・「トヨタ SAI」だ。発売当初はこのクルマに対して懐疑的(むしろ批判的)だったが、北米市場でレクサスが「HS」の販売を取りやめた辺りから、徐々に考えが変わってきた。北米ではプリウスは日本より高く販売されているが、レクサスは北米の方が相当に安い(日本のレクサス価格はアメリカ人にとっては理解不能)。そのレクサスのラインナップからさりげなくHSが消えたのだ。

  トヨタはHSの北米撤退について販売不振を理由に挙げているが、それならば日本市場のみ販売を続行する意図が不明だ。北米のレクサスにはESというFWDのセダンがあり、ESにもハイブリッドが設定されている($40000以下で格安だ)というのもあるだろうが、なんか「キナ臭い」感じがしないでもない。もしかしたら「HS」は北米価格では採算が取れないほどの高コストなクルマなのではないかとBさんは睨んでいる。日本価格ならおそらく利益はでるだろうが、ESの下のカテゴリーになる北米ではかなりタイトな価格設定を余儀なくされる。

  さらにBさんの頭をよぎったのが、北米のレクサスESに使われているHVシステムだ。これはトヨタブランドのカムリと同じ設計のもので、日本市場でもクラウンやレクサスISにも投入されてトヨタがまさに「拡販」を目指しているシステムだ。トヨタが「店じまい」しつつあるHSのシステムとトヨタが「拡販」を目指すカムリのシステムは一般には後者の方が優位なシステムと言われているが、果たして本当だろうか? 加速性能と燃費性能に優れているからと言って「優位」と結論付けてしまっていいのだろうか?

  実は「SAI」を選んだBさんにも「確信」は一切ない・・・。長年の勘だ。2000年以降のトヨタの「店じまい」は常に高コスト体質の「改善」にリンクしているように思う。2000年当時発売していたトヨタ車が今同じ価格でリバイバルされれば、大ヒットするであろうクルマはたくさんあるのだ。「AE111カローラレビン(4A-GE)」や「E120H型カローラランクスZエアロ」など絶対に当時の価格では販売できないだろう。今のトヨタのラインナップを見渡してみて、2000年頃の高品質時代の名残と言える「お宝モデル」は、この「SAI」と「GRX130型マークX(G's)」くらいじゃないだろうか? この2台ともに発売当初は取るに足らないと思っていたが、今や「一周回って」カッコ良く思えてきたくらいだ・・・。




  いよいよカローラにもハイブリッドモデルが登場し、トヨタブランド内でもハイブリッドモデルによる競争が激化してくることが予想される。しかし作る側のトヨタからしてみたら、中身が同じクルマをできるだけ多く作りたいというコスト面でのインセンティブが働くので、プリウスやアクアに使われているシステムを他の車種にまで広げていくのだろう。当然ながら数パターンが存在するトヨタのハイブリッドシステムも次第に淘汰されていって、高コストな体質のシステムは次々に消えていく運命にある。

  トヨタSAIとレクサスHSは、トヨタが初期に作り上げた2.4L直4エンジン+ハイブリッドのシステムを使っている。このシステムはその後の車種には投入されなかったので、今後は生産が打ち切られ両車ともにラインナップ落ちする公算が大きい。まあトヨタが生産をやめてしまうくらいだから、大したシステムではなかったのだろうと大半の人は思うかもしれない。しかしバブル期以降、生産が打ち切られた日本車の多くがその後その存在を惜しまれて、後になって評価が急上昇することが結構あったりする。トヨタ車の場合だと、レクサスの日本導入時に消滅した、アルティツァやアリストターボがその後の中古車市場で高値で取引された。この10年に限定すれば「消えるトヨタ」はかなりの確率で「買い」なのだ・・・。


↓最近は3代目プリウスも「酷い」とまでは思わなくなってきた。それ以上にこのSAIのデザインは・・・なんというか「含蓄」がある。

2013年6月20日木曜日

マツダ・デミオ 「デザインとハンドリングこそが欧州NOWだ」

  

  中堅商社に勤めるAさんの愛車は「マツダ・デミオ」だ。600万円を超える年収を考えると、ちょっとシンプルなクルマな気もするが、Aさんにとってはこだわりの選択だ。20代のころはスポーツクーペやセダンへの憧れもあったが、約3年におよぶイギリスでの海外勤務を経験するや、クルマへのイメージが一気に変わった。イギリスではフォード・フォーカスに乗っていた。イギリス人の同僚もボクスホール(英国オペル)のアストラやアギーラといったハッチバックに乗っている人が多かった。アギーラはスズキ・スプラッシュのOEMだ。

  イギリスでもセダンやスポーツクーペを見かけるが、乗っている人は大抵はアッパークラスの人々だ。階級社会のイギリスでは、上流階級の生活そのものに特に興味は持たない流儀のようで、オフィスに囲われた「労働者」でしかない同僚達はメルセデスやBMWに興味などまったく示さない。日本人のように「いつかはクラウン」とばかりに年相応に高級車に乗るといった発想はまったくないのだ。よってセダンの車種は日本以上に限られている。しかしその分BセグやCセグにはプジョーやVWといった日本でもおなじみのメーカーだけでなく、ダチアやキアといった10000ユーロを大きく下回る金額のクルマを作るメーカーまで豊富に揃っている。

  日本に帰って来たAさんは、中途半端な高級車が並ぶ渋谷の道玄坂を見て、日本のクルマ文化の浅はかさを痛感した。「完全に社会的機能を失ったガラクタ」が渋滞する風景(日本の都会の風景を破壊している)に苛立ちしか感じなかった・・・。「絶望的に醜い旧型メルセデスと、奇妙なまでにギラついている新型メルセデスと、ブランドの前に判断能力をなくした日本のユーザー」どこまでも絶望的な状況だ。おそらくヨーロッパ人が見ても同じ感想を漏らすだろう。Aさんは日本の「不健全」なクルマ文化に背を向けて、イギリスで乗っていたようなクルマを探した。欧州で活躍する日本車も少なくないので、その中からスズキ「スプラッシュ」とマツダ「デミオ」を候補にした。どちらも欧州で十分に通用するハンドリングとスタイリングを備えた素晴らしいクルマだ。




  「デカいクルマは東アジア的な価値観の投影にすぎない」ということは現代の日本人も徐々に理解しつつあるはずだ。それでも日本人のクルマ嗜好はユーザーの高齢化という現実の中で、簡単には変わらないだろう。大きくて頑丈で高出力のエンジンを持つクルマが間違いなく正義と言えた時代は10年前にとっくに滅びている。もはや、真剣にドイツ車の優秀性など語るモータージャーナリストは少なくなった(ベストカーにはまだまだいるが・・・)。小型エンジンも急速に高性能化して来て、安価なクルマでも十分な加速性能が得られるようになった今では、街中では大型のセダンより軽自動車の方が立ち上がるのが早いのは常識だ。

  さらに車重が軽自動車の2倍の1500kg以上もあるクルマは当然ながら、一旦スピードに乗ってしまったら、あらゆる局面での「制動」で軽自動車などの軽いクルマよりもたくさん「マテリアル」を消費しなければならない。同時に重いクルマは止まるにも曲がるにも大きな労力が必要だ。いくら頑丈といっても100km/hで事故ればメルセデスSクラスでも無事ではすまない。そんなこともあり、海外では軽量化技術が進んでいる日本車が圧倒的に大人気だ。要は「軽ければ軽いほど、優秀で安全なクルマ」だということだ。


↓その性能はトヨタも認めていて、北米版ヴィッツ(ヤリス)はデミオベースになることが決定。

2013年6月18日火曜日

RAV4 「なんだかんだいってもトヨタは北米販売車がお買い得」

  日本で販売されるトヨタブランド車は、トヨタ傘下のさまざまなメーカーがコラボして企画されたクルマが雑多に含まれていて、その価格設定もよくよく見ると不整合な点がいくつも出てくる。簡単に言うと、「お買い得なクルマ」と「絶対に買ってはいけないクルマ」がごちゃ混ぜになっているから、よく調べて買ったほうがいいということだ。

  「どうすればお買い得なクルマが選べるのか?」最も端的にトヨタブランドの特徴を表すとすれば、「一番高価なマジェスタが一番お買い得で、一番安価なパッソが一番損をする」となるかもしれない。マジェスタはお買い得すぎてとうとうラインナップ落ちしてしまったようだ(まだ在庫車があると思うが)。600万円台でV8搭載&エアサス装備なんて夢のクルマだ。中古車はレクサスLSもだぶついているおかげで、さらにバーゲン価格になっているし、トヨタのV8は10万キロ走ってからが本領発揮という超絶クオリティの優良エンジンと言われ、30万キロを余裕で走ると専らの評判だ。

  マジェスタ以外ではどれががお買い得かと言うと、やはり北米でやたらと売れている「カムリ」と「RAV4」がコストパフォーマンスが非常に高く、全く損をしないクルマと言える。ただこの2台は極端な北米との価格差を抑えているので、トヨタとしては「旨味」が少なく日本であまりたくさん売れてほしくないような素振りも見え隠れする。カムリHVより「SAI」という高級ハイブリッドモデルの方をたくさん売りたいし、さらに高級なレクサス「HS」を売りたいと考えるのは当然だが、クルマの実力が価格にまったく比例していないので、北米では「SAI」は売られていないし、レクサス「HS」も撤退を余儀なくされた。

  トヨタの北米販売モデルとしては、かの地で幾度となく物議を醸しているプリウスに加え、アクアとヴィッツがある。この3台はカムリHVと違い、いずれも日本価格が北米価格を下回る「戦略価格設定」なので、ここ数年は日本での普通車販売TOP10の常連になっている(もちろんトヨタの宣伝力とエコカーブームの賜物だが・・・)。カムリHVは北米ベストセラーで、韓国COTYも獲得したトヨタのエース級の「スーパーセダン」なのだが、日本価格はやや高めなのが残念だ。

  トヨタのもう一台の北米ベストセラーが「RAV4」だ。このクルマは北米が主戦場なのにも関わらず、日本価格の方が安く設定されていて、トヨタブランドの「ワールドクラス」のクルマの中で実は一番のお買い得車だったりする。いくら日本市場でマツダ「CX-5」とスバル「フォレスター」が頂上決戦を繰り広げようが、北米ではどちらも「RAV4」の足元にも及ばない。確かにライバルのホンダ「CR-V」に販売面では上に行かれているが、CR-Vは日本市場では低スペックな2Lの日本専用モデルがやたらと高価格に設定されているので、お買い得感はまったくない。

  日本でも様々なSUVが売られているが、国産もドイツ車もデザインはどれも似たり寄ったりで、どのクルマも「洗練」という言葉はまったく当てはまらないレベルだ。性能面でもスバルの4WDだのマツダのディーゼルだのそれなりに個性はあるが、「直4の2.4Lで200万円」という直球勝負のトヨタRAV4の個性が一番際立っているように思う(トヨタは日本では勝負してないようだが・・・)。日本のユーザーがSUVに求める要素は、コンパクト・ミニバン・セダンを避けつつも、「居住性」を追求する点にあるようだ。居住性に関して世界でもっとも権威がある大衆ブランドといえば、間違いなく「トヨタ」なわけで、ミドルサイズSUVに関してはRAV4の「一択」という結論でいいのではという気がする。それでも日本では売れない・・・。


↓イヴォーグとかいう、狭っ苦しくて、安っぽいプレミアム感全開のSUVの何がいいのか?まったく理解できません。

  

  

2013年6月10日月曜日

トヨタ・プリウス 「イケメンならクルマは何だって構わない」

  日本で一番たくさん走っているクルマであろうトヨタのプリウスを、「プライベートカー」として「敢えて」買おうとする人(統計上は相当な数だ)には、それなりの「計算」があるのではないかと思う。それが月に100kmも乗らないユーザーだったならば、相当の「深謀遠慮」があるのでは・・・。

  デジタルコンテンツ開発会社を経営するAさん(30)は、大学卒業後3年間は大手の保守管理会社でSEを勤め、4年前に独立した。現在のSEは「空前のバブル」で大量採用・大量退職当たり前だ。能力の有無などはまったく問われず、大抵は3年目で事実上の「定年」を迎え、給料の安いフレッシュマンに職場を譲る羽目になる。そんなことは入社時から十分にわかっていたので、Aさんは3年後の独立に向けて着々と準備を整えていた。

  それでも、いざ「起業」となると自分の力で仕事を獲ってくるツラさは尋常ではなく、まったくもって順風満帆とはいかなかった。試行錯誤を繰り返し、アプリ制作に軸足を移して当面の売上を確保した。去年辺りから受注は捌ききれないほどに舞い込むようになり、かつての同僚たちを助っ人として雇い入れて乗り切ってきた。下請け中心なので、収益は割に合わない水準でしかなかったが、徐々にチームとして大きな仕事ができる組織が成り立っているのを実感しつつあった。

  その後、急成長を遂げていたゲーム産業で自主コンテンツの開発を本格化させると、まもなく事業は完全に軌道に乗った。SEの時代とは比べものにならないほどの高収入に浮かれて「高級輸入車」の購入も頭を過ったが、SE時代に大量に読んでいたビジネス書の一節が心に刺さっていて思いとどまった。いま自分がメルセデスに乗り始めたら、一緒に頑張ってくれた仲間達はどう思うだろうか? いま仲間達に疑念を抱かせるようなことをして、みんな離れていってしまったら、自分はただの愚か者だ・・・。

  今、Aさんはオフィス拠点の移転を考えている。最有力候補地は過疎化が進む徳島県だ。急峻な四国山地に阻まれて地デジ受信環境がよくない場所が点在し、この地では光ファイバー網の整備が地方にしては進んでいる。今ではIT企業にとっての好立地として注目を浴びていて、転入する企業も多い。大都市・神戸まで高速道路で1時間程度の場所なので、それほどの僻地というわけでもない。もっともITビジネスなので、社員全員がその地へ移転する必要はないのだが(そもそもオフィスもいらない・・・)。

  週末は神戸までドライブすることもあるだろうからクルマも必要だ。高速道路を使うので軽自動車ではちょっと都合が悪い。Aさんはトヨタのプリウスを買う事にした。徳島では軽自動車ばかりなので、プリウスに乗ることへの抵抗は意外に少ない。そもそも高級車など乗っていたら完全に浮いてしまう。「燃費」などは完全に後付けの理由でしかない。大都市圏の密集住宅地では繁殖しすぎて「殺風景」以外の何者でもないプリウスだが、徳島の田園風景には「近未来」デザインが良く映えるだろう・・・。「乗る場所を自分で判断できない『センスのない人』は絶対に成功しない」Aさんはそう確信している。



(この話はすべてフィクションです。実在の個人・団体とは一切関係がありません。)


↓やはり「イケメン」にはプリウスが似合う・・・。