去年、トヨタとスバルが久々のFRスポーツカーとして開発した「86/BRZ」は、話題を先行させるためか車名を「86」として、かつてのAE86の後継車であるかのようなプロモーションを繰り広げました。その甲斐もあって販売は非常に好調に推移していて、トヨタとしてもスポーツカー市場の可能性を再認識できたと思います。海外では廉価なスポーツカー専用設計車として最大級の賛辞をもって迎えられました。
日本でもその素性の良さから考えて、車名に関係なく大ヒットしうるポテンシャルを秘めたクルマだったと思います。もし86ではなく違う名前だったならば、あるいは最終的にはもっと売れたかもしれません。もちろん「86」という名前で多くの某漫画のファンを惹き付けることに成功した部分も当然にあるでしょうが・・・。
しかしそもそもトヨタ86はいったいどういう了見で、AE86の後継車とみなすことができるのでしょうか? AE86はごくごく普通の乗用車に4A-GEという新開発のツインカムエンジンを搭載してスポーティな走りを実現したモデルでした。一方のトヨタ86(FT86)は完全なる専用設計のスポーツカーであり、エンジンもまったく設計が違うスバル製のボクサーエンジン(FA20)を使っています。ハッキリ言って全く別の「家系」のクルマと言えるのですが、プロモーションのために無理矢理に同じ名前を付けてしまったようです。
AE86に使われていた4A-GEですが、AE92、AE101、AE111と改良を受けながらも使われ続け、最終型セリカ登場の1999年に後継エンジンの2ZZ-GEが登場しバトンを引き継ぎます。AE92以降のトヨタの小型(Cセグ)スポーツモデルはFF車となっていましたが、それでもトヨタはスポーツグレードを欠かさず設定し、セリカだけでは捌けない2ZZ-GEを同クラスの乗用車(カローラフィールダー、カローラランクスなど)に6MTで設定しました。
この時点での日本市場向けのカローラは欧州向けと基本設計が同じでした。2ZZ-GEを搭載したカローラランクスZエアロは、トヨタが欧州向けに作ったホットハッチです。1.8LのNAながら190psを絞り出す高性能エンジンをヤマハに発注し、このエンジンを載せる事で1997年に登場して欧州を席巻した初代シビックtypeR(EK9)と互角に戦えるクルマをトヨタはしっかり作っています。
このカローラランクスのプラットホームは、国内のカローラファミリーへと引き継がれず、トヨタの欧州戦略車として、欧州版カローラとなり、そして日本市場ではオーリスという車名に変わりました。ヤマハに発注した2ZZ-GEは見事に予定数を売り切ったのですが、販売に苦慮したトヨタは2006年からZRエンジンへの全面切り替えを行い、オーリスには2ZR-FEという144psの1.8LでNAのエンジンが新たに充当されました。
ロータス・エリーゼにも2ZZ-GEに引き続き供給されているエンジンで、ミニバンからスポーツカーまで幅広いバリエーションを持っています。まあ汎用エンジンで間違いないのですが。2代目オーリスには新たにRSグレードが設定され、2ZR-FEに6MTを組み合わせたスポーティなユニットは、トヨタ車のナチュラルなスポーツフィールが楽しめる、由緒正しいAE86の後継モデルと言ってもいいのではと思います。
そんなことをボソボソと言ったところで、世間の認識が変わるわけでもないでしょう。「ハチロク」の後継は「86」と認知されたままでしょうし、オーリスと言えば「シャア専用」というのが相場なんでしょうが・・・。
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