アウディが昨年発売した「ゴルフ高級版」ことアウディA3の存在がほとんど忘れ去られている。ベース車のゴルフハイラインがライバル輸入車メーカーよりも高い価格設定なので、それよりもさらに高価なA3が敬遠されてしまうのも何となくわかります。アウディがA3を発売したときに強調したのが、「クルマの中でネットが使えます!」というシステム。どうもこれがクルマ好きには全くウケていないようで、複数の評論家が「もっと他にやることがあるだろう?」と辛辣な意見を投げかけていました。
その一方で産経や東洋経済など「一般紙」のクルマ記事ではA3の先進性を称賛する声もありました。「アップルやグーグルのような発想でクルマが作られる時代」みたいなことを言ってましたが、これはなんかちょっと違う気する・・・というより「理解のレベル」がとても低いです。クルマに無線LANを設置すること自体は1980年代の「自動車電話」と同じレベルの発想です。もちろん運転中のネットって誰が考えても危ないですし・・・。アウディもマツダも「クルマのIT化」に関してはやってることは全然新しくないし「アップル的」でもない。そんなものに価値を見出す人のセンスは全く以てオカシイ!
むしろアップル的な発想がクルマ作りに与える良い影響は、このホンダ「ヴェゼル」に感じることができます。自動車には「高級車」という概念が未だに存在しますが、アップルの製品「i-phone」や「mac book air」には特別に「高級」というイメージはありませんし、価格設定も極めて平凡な水準に押さえられています。ネット通販で買えば、「エイサー(パソコン大手の台湾メーカー)」とほぼ同スペックのものでは同価格です。それでも他社のスマホやラップトップには絶対に負けない「性能」と「質感」を有していて世界各地の特にお金が無い若者に熱く支持されています。
アップル製品はユーザー目線でとても「合理的」で「価格・性能・質感」の3つを並立させるという、これまたごくごく根元的な発想で設計されています。もちろんこの当たり前のことをやるのがとても難しいのですが・・・。やっていることは何も新しくないけども、これまでの幾多のパソコンメーカーが決して登り詰めることが出来なかった高みへと辿り着いているので、「斬新」に感じるのかなという気がします。
さてホンダ「ヴェゼル」ですが、このクルマこそがいよいよ日本メーカーが辿り着きある「高み」に一番近いところにやって来たようです。まるでアップル製品のように「きっちり使い切れそう」なほどよいボリューム感がまず第一印象です。持て余さない大きさなんだけど「画面は決して小さ過ぎない」アップルのように、車内のスペースはとても効率的です。インパネやトリムの質感も価格を考えると十分以上どころか軽く「サプライズ」なほどに満足させてくれます。製造コストはたいして掛けてはいないと思いますが、設計者のセンスでそれをカバーしてます。
そして最近ではフランスなどでも大流行の「都市型SUV」。パソコンで例えるならば必要なスペックをきっちり収めた「ネットブック」でしょうか。制限速度が低い日本のどんな道でもヴェゼルHVならば「必要十分」に走るだけの性能はありますし、特に遅いと感じることはないです。日本メーカーが世界に誇る小型車技術は「都市環境での移動」においては輸入車を寄せ付けないだけの素晴らしいものがあります。日本の都市部の世界最高レベルに整備された道路を、法定速度を守って走る限りでは「車軸式サス」でも乗り心地が大きく劣ることはないはずです。
「ネットブック」が持たないような、「高性能なCPU」「ハイスペックなメモリー」「大容量のハードディスク」なんてよっぽどヘビーな「ゲーマー」でない限り要りませんし、今どきゲームなんて人によっては「時間の無駄遣い」以外の何者でもないと考えるでしょう。そういう人にとっては400psオーバーに8速AT、高性能サスを装備した「高級車」なんて時間では無く「お金の無駄遣い」に思えるわけです。オーナーの皆様には大変に恐縮ですが、「レクサス、メルセデス」=「ゲーマー専用機」wwwという意見はなるほどと思ってしまいました。
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2014年4月2日水曜日
2014年2月10日月曜日
ホンダ・ヴェゼル「日本車繁栄の象徴」
ちょっと乱暴な言い方ですが、実用車レベルでの「日本車」の性能は間違いなく世界最良と言い切っていいと思います。日本人は一般的に自動車産業の親和性は非常に高いと思いますし、なによりとても優秀な人材が自動車メーカーへと集まっています。クルマの信頼性という面でも、乗り心地などの感覚的な面でも突き詰めれば、日本がもっとも優秀な結果を出していると言えます。
それでも自動車の専門家を自認するような人々が書くレビュー(プロのレビュー)を読むと、小学生でも分かる「日本車が最高」という常識が間違っているのか思うような「???」な感想を持つ時がたまにあります。「常識」という言葉を楯に話を進めるのもバカっぽいので・・・、それでは日本で販売されているどのクルマが実際にドイツ車や韓国車よりも明確に下回るのか?と考えると、少なくとも日本車が輸入車ユーザーにボロクソに言われるような決定的な事柄なんてそれほど見当たりません。
全てはかつて確実に存在した日本と欧州の使用環境の差がそのままクルマ作りに反映されて、その差異を極めて恣意的な視点で比べた時に日本車が分が悪いことも起こるのでしょう。しかしカローラやプリウスをなんでわざわざ欧州車と比べなきゃいけないのか?という素朴な疑問が湧いてきます。そういう土俵に日本車を挙げるならば、欧州市場を制圧しようと意気込む、かつての「三菱デボネア」、今の「マツダアテンザ」「日産GT-R」といった野心的なクルマだけでいいのではという気がします。欧州向けのワゴンを用意しないレクサスのクルマですら安易に欧州車と比較するのはお門違いだと思います。
そして何よりもクレイジーな事実は、BMWやメルセデスが日本に近い「成熟市場」向けに日本車に擦り寄ったクルマ作りを始めていることです。現行のBMW1や3シリーズはもはや日本車と同じ味付けといってもいいくらいです。かつてのBMW車の良さ(味わい)を欲するユーザーには、ディーラーから必ず「Mスポ」というオプションを奨められます。そして欧州メーカーがいま必死になって開発しているのが日本流のミニバンだったりします。
アウトバーンを200km/hで走る必要が欧州でもほとんどなくなってきて、日本と同じように背が高い実用的なクルマが増えているという事情が背景にあります。BMWもメルセデスも今後日本車が得意なミニバンやエコカーを片っ端からパクっていくはずです。おそらく欧州市場にホンダが日本で絶賛発売中の「Nワン」や「Nボックス」といった軽自動車を持っていけば、彼の地の人々は泣いて喜ぶのではないかという気がします。後席のシートが自由に動くなんてクルマはほとんど無いでしょうから・・・。
BMWやメルセデスの動向から考えるに日本メーカーの正当性がハッキリと証明されてめでたしめでたし!なのですが、1980年代から絶えず日本メーカーは既に孤高の道を突き進んでいて、その目指す先はドイツ車や韓国車などではなく、他でもないライバルの日本車なわけです。特にトヨタとホンダはお互いに創業以来ほかの自動車メーカーの傘下になったことがない「純血種」であり、独自の経営方針に絶対の自信を持つメーカー同士の「つば迫り合い」には鬼気迫るものがあります。お互いに絶えず相手のクルマを細かく分析し、相手の狙いを先読みして出し抜こうと激しい情報戦を繰り広げています。フィットHVとアクアの燃費対決などはもはや茶番に過ぎず、乗り心地を無視すれば50km/Lくらいは余裕なんだとか・・・。
日本市場をハイブリッドで埋め尽くしたといっていいトヨタとホンダの2000年代の戦いの第1ラウンドは終結し、ハイブリッドが常識になった市場での第2ラウンドが始まったところです。蛇足ですが、200万円台のクルマにHVを積むという世界最先端の土俵にドイツメーカーが自力で立つことは不可能でしょう。第1ラウンドで完勝したトヨタにはやや駒不足な感じがあります。復讐に燃えるホンダが優れた商品力を発揮することは規定路線だったかもしれません。そんなホンダのもっとも強力な1台がこのヴェゼルというわけです。
あえてちょっとアレな書き方をすると、「ヴェゼルは日本人の良識の証」といったところでしょうか? SUVというパッケージは世界中で大ヒットしていますが、もともとは地雷や爆弾テロへの耐性を求めるVIPの要求で作られたという経緯があります。もちろん世界に広まった汎用SUVにはそんな性能はなく、トラックと車台と共用できるという生産上の合理性がその普及の原動力だったと言えます。道路事情が極めて悪い地域では走破性が大変重宝されるわけですが、道路管理が行き届いた日本に近い環境では川を渡る性能なんて要らないわけです。ルノーの支援を受ける前の日産は、エクストレイルというたった1台のクルマの為に川を渡る技術を極めるなど不合理な仕事に血道を上げていたと、経営再建に取り組んだ担当者が自嘲気味に語っています。
鉄道も高速道路も整備された日本でSUVに乗る意義とは何なのか? あえて納得いく答えを出すとするなら、JRの電車に乗るより箱根登山鉄道の電車に乗る方がドキドキする感覚に近いかもしれません。いや2階建ての列車の展望の良さに近いのかも。まあ程度の差はあれどもこの感覚は肯定すべきだと思います。ただし本格SUVには多くのネガティブな要素も同時にあるわけです。輸入車のSUVを調べれば分かりますが、1700kgといった高級車並みの重量を誇るものがほとんどです。車重は燃費だけでなく、あらゆる部品の消耗を早めますし、安全な走行に大きな影響を与えます。
そこでホンダはこのSUVのあり方に徹底的にメスを入れました。厳密に言うと先にアイディアを出したのは日産ではありますが・・・。とりあえず「軽量化」をして魅力を損なうことなく、SUVを安全で負担の少ないクルマにしました。ホンダ・ヴェゼルのパッケージを考えると、極めて理性的に考えられたクルマだと結論するしかないわけですが、200万円足らずのこの小型SUVにハイブリッドを仕込むという仕事をやり遂げたのが、世界でホンダが初なのです(スバルもHVをターボ代わりにしていますが・・・)。世界80以上の国でクルマが作られているそうですが、これまで誰もやろうとしないかったということに驚きすらあります。
ホンダがさくっと示した理性に対して、ポ◯シェカ◯エンやB◯W X◯って一体何なの?といつも思います。ドイツ車ばかりを目の敵にしてもしょうがないですね。マ◯ダC◯5やト◯タハ◯アーってまだまだ新しいクルマなんですが、あまり先々のことを考えずに惰性で作ってしまった印象すらありますね。まあそれくらいにこのヴェゼルというクルマには正義が宿っています。カーメディアの評価は後手後手だったにも関わらず発売1ヶ月で3万3千台!これは日本のユーザーの賢さを示すものですし、台数にも納得です。かつてプリウスが示した日本車の圧倒的な先進性を引き継ぐ次世代の「スーパースター」が現れたといってもいいでしょう。
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それでも自動車の専門家を自認するような人々が書くレビュー(プロのレビュー)を読むと、小学生でも分かる「日本車が最高」という常識が間違っているのか思うような「???」な感想を持つ時がたまにあります。「常識」という言葉を楯に話を進めるのもバカっぽいので・・・、それでは日本で販売されているどのクルマが実際にドイツ車や韓国車よりも明確に下回るのか?と考えると、少なくとも日本車が輸入車ユーザーにボロクソに言われるような決定的な事柄なんてそれほど見当たりません。
全てはかつて確実に存在した日本と欧州の使用環境の差がそのままクルマ作りに反映されて、その差異を極めて恣意的な視点で比べた時に日本車が分が悪いことも起こるのでしょう。しかしカローラやプリウスをなんでわざわざ欧州車と比べなきゃいけないのか?という素朴な疑問が湧いてきます。そういう土俵に日本車を挙げるならば、欧州市場を制圧しようと意気込む、かつての「三菱デボネア」、今の「マツダアテンザ」「日産GT-R」といった野心的なクルマだけでいいのではという気がします。欧州向けのワゴンを用意しないレクサスのクルマですら安易に欧州車と比較するのはお門違いだと思います。
そして何よりもクレイジーな事実は、BMWやメルセデスが日本に近い「成熟市場」向けに日本車に擦り寄ったクルマ作りを始めていることです。現行のBMW1や3シリーズはもはや日本車と同じ味付けといってもいいくらいです。かつてのBMW車の良さ(味わい)を欲するユーザーには、ディーラーから必ず「Mスポ」というオプションを奨められます。そして欧州メーカーがいま必死になって開発しているのが日本流のミニバンだったりします。
アウトバーンを200km/hで走る必要が欧州でもほとんどなくなってきて、日本と同じように背が高い実用的なクルマが増えているという事情が背景にあります。BMWもメルセデスも今後日本車が得意なミニバンやエコカーを片っ端からパクっていくはずです。おそらく欧州市場にホンダが日本で絶賛発売中の「Nワン」や「Nボックス」といった軽自動車を持っていけば、彼の地の人々は泣いて喜ぶのではないかという気がします。後席のシートが自由に動くなんてクルマはほとんど無いでしょうから・・・。
BMWやメルセデスの動向から考えるに日本メーカーの正当性がハッキリと証明されてめでたしめでたし!なのですが、1980年代から絶えず日本メーカーは既に孤高の道を突き進んでいて、その目指す先はドイツ車や韓国車などではなく、他でもないライバルの日本車なわけです。特にトヨタとホンダはお互いに創業以来ほかの自動車メーカーの傘下になったことがない「純血種」であり、独自の経営方針に絶対の自信を持つメーカー同士の「つば迫り合い」には鬼気迫るものがあります。お互いに絶えず相手のクルマを細かく分析し、相手の狙いを先読みして出し抜こうと激しい情報戦を繰り広げています。フィットHVとアクアの燃費対決などはもはや茶番に過ぎず、乗り心地を無視すれば50km/Lくらいは余裕なんだとか・・・。
日本市場をハイブリッドで埋め尽くしたといっていいトヨタとホンダの2000年代の戦いの第1ラウンドは終結し、ハイブリッドが常識になった市場での第2ラウンドが始まったところです。蛇足ですが、200万円台のクルマにHVを積むという世界最先端の土俵にドイツメーカーが自力で立つことは不可能でしょう。第1ラウンドで完勝したトヨタにはやや駒不足な感じがあります。復讐に燃えるホンダが優れた商品力を発揮することは規定路線だったかもしれません。そんなホンダのもっとも強力な1台がこのヴェゼルというわけです。
あえてちょっとアレな書き方をすると、「ヴェゼルは日本人の良識の証」といったところでしょうか? SUVというパッケージは世界中で大ヒットしていますが、もともとは地雷や爆弾テロへの耐性を求めるVIPの要求で作られたという経緯があります。もちろん世界に広まった汎用SUVにはそんな性能はなく、トラックと車台と共用できるという生産上の合理性がその普及の原動力だったと言えます。道路事情が極めて悪い地域では走破性が大変重宝されるわけですが、道路管理が行き届いた日本に近い環境では川を渡る性能なんて要らないわけです。ルノーの支援を受ける前の日産は、エクストレイルというたった1台のクルマの為に川を渡る技術を極めるなど不合理な仕事に血道を上げていたと、経営再建に取り組んだ担当者が自嘲気味に語っています。
鉄道も高速道路も整備された日本でSUVに乗る意義とは何なのか? あえて納得いく答えを出すとするなら、JRの電車に乗るより箱根登山鉄道の電車に乗る方がドキドキする感覚に近いかもしれません。いや2階建ての列車の展望の良さに近いのかも。まあ程度の差はあれどもこの感覚は肯定すべきだと思います。ただし本格SUVには多くのネガティブな要素も同時にあるわけです。輸入車のSUVを調べれば分かりますが、1700kgといった高級車並みの重量を誇るものがほとんどです。車重は燃費だけでなく、あらゆる部品の消耗を早めますし、安全な走行に大きな影響を与えます。
そこでホンダはこのSUVのあり方に徹底的にメスを入れました。厳密に言うと先にアイディアを出したのは日産ではありますが・・・。とりあえず「軽量化」をして魅力を損なうことなく、SUVを安全で負担の少ないクルマにしました。ホンダ・ヴェゼルのパッケージを考えると、極めて理性的に考えられたクルマだと結論するしかないわけですが、200万円足らずのこの小型SUVにハイブリッドを仕込むという仕事をやり遂げたのが、世界でホンダが初なのです(スバルもHVをターボ代わりにしていますが・・・)。世界80以上の国でクルマが作られているそうですが、これまで誰もやろうとしないかったということに驚きすらあります。
ホンダがさくっと示した理性に対して、ポ◯シェカ◯エンやB◯W X◯って一体何なの?といつも思います。ドイツ車ばかりを目の敵にしてもしょうがないですね。マ◯ダC◯5やト◯タハ◯アーってまだまだ新しいクルマなんですが、あまり先々のことを考えずに惰性で作ってしまった印象すらありますね。まあそれくらいにこのヴェゼルというクルマには正義が宿っています。カーメディアの評価は後手後手だったにも関わらず発売1ヶ月で3万3千台!これは日本のユーザーの賢さを示すものですし、台数にも納得です。かつてプリウスが示した日本車の圧倒的な先進性を引き継ぐ次世代の「スーパースター」が現れたといってもいいでしょう。
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2013年9月12日木曜日
フィット「最善を尽くしたクルマ」
日本車のデザインには個性がないとよく言われる。軽自動車・コンパクトカー・ミニバンのデザインが各メーカーともに似たり寄ったりで、トラックを除く乗用車の大部分をこれらのクルマが占めるからそう感じるのも無理はない。対比される輸入車の多くは高級車であるからより一層、日本メーカーのデザインはダメだと感じる人もいるようだ。現実にはどこの国でも平凡なデザインの実用性の高いクルマが多く目立つし、モーターショーを見ても日本メーカーのデザイン力が特に低いということはないと思う。
日本車の中心がこの10年で軽・コンパクト・ミニバンへ大きくシフトしたことで、街の風景が劣化しているという厳しい意見もある。ただこれも軽・コンパクト・ミニバンのデザインに対して、観る人がどれだけ「リテラシー」を持っているかによって大きく左右されるものだろう。同じコンパクトカーを観てもその感想は大きく分かれる。大手メーカー各社のコンパクトカーの現行モデルはいずれもデザイナーの意図が少なからず感じられる。マーチ・ヴィッツ・アクア・デミオ・スイフトなどはコンパクトカーデザインの壁(限界)を打ち破りつつあり、世界の最先端を歩んでいると言える。
ここまでコンパクトカーのデザインで白熱している自動車生産国はおそらく日本だけだろう。そんな最激戦区の日本で最古参のデザインにも関わらず、常に「勝ち組」と言える売上を叩き出し続けたクルマがホンダのフィットだ。前述のライバル各車と比べると、決してデザイン面での強烈な個性を持っているわけではなく、むしろ保守的で「機能美」を体現するスタンスに依っている。ちょっと抽象的な表現になってしまったが、要はライバル車と比べて車内が広いだろうと容易に想像できるデザインになっているということだ。実際に車内の容積はクラス随一の広さを誇る。
日本のコンパクトカーがカッコ良くなって、ユーザーの満足度が上がることは、とても結構なことなのだが、なんかとても大事なことを忘れている気がする。コンパクトカーはあくまでも簡易的なクルマであり、どんなに頑張ってみたところで高性能なGTカーをこよなく愛するユーザーからは見向きもされないのが現実だ。日本では軽自動車と普通車の区分があるが、コンパクトカーはトップエンドのGTカーと軽自動車のどちらに近いかといえば、その設計はほぼ軽自動車と同じ程度に簡素化されている。コンパクトカーに乗るくらいなら税金の安い軽自動車を選択するのも自然なことだ。
特に最近のデザインを強調したコンパクトカーが実用車の本分を忘れているとは言わないが、日本専用モデルである軽自動車の進化に比べて「ゆるやかな」上昇という印象がある。ハイブリッド専用モデルのアクアの売れ行きは目覚ましいものがあるが、果たして燃費性能以外の進化をアクアがもたらしたか?というと疑問が残る。普通車のボトムエンドとして驚異的なコストカットの痕だけが痛々しく残り、それでも軽自動車よりも格上だという建前と、100万円〜の本体価格だけが取り柄のクルマだ。
価格で競争するメーカーと価格でえらぶユーザーのどちらが悪いというわけではないが、本体価格が100万円のクルマに多くは期待できない。もし中古ドイツ車で100万円という価格なら10年10万キロは軽く超えていてエアコンは死んでいる個体が頭に浮かぶほどだ。そんな価格で新車が買えてしまうということは、たいして素晴らしいことではないように思う。ましてや100万円のクルマのデザインを改良してスペシャリティカーを作ったとしても、ユーザーの満足度は決して上がらないだろう。
やはり本体価格が100万円台のクルマは第一に実用的であるべきだと思う。4人乗車でも外から見て狭っ苦しく見えないデザインこそが、コンパクトカーに求められる重要な要素だ。その視点で考えると、フィットに加えて日産キューブが人気を博す理由もなんとなくわかる気がする。デザインが良いクルマを選ぶと同時に、実用的であるクルマを選択することが、クルマユーザーとしての「良識」と言える。
結論を言うとホンダ・フィットは「良識」であり「正義」だ。実用性に優れたボディ設計だけでなく、Vテックで5MTという走りのグレードも選ぶことができる。コンパクトカーがしばしば批判される原因の走行性能の低さも、選択次第で回避できるようになっている。やや暴論かもしれないが、家族4人で走るなら「アクアお父さん」よりも「フィットお父さん」の方が常識人だ。アクアやデミオに家族4人を詰め込むのは端から見てイケていない。
コンパクトカーを嫌って「ヴェルファイアお父さん」や「BMW5お父さん」の選択もいいけど、なんか気負っている気もする。最近では「CX-5お父さん」と「ジュークお父さん」が増えているようだが、家族4人乗車ならSUVという選択は極めて妥当だ。フィットにはそんなSUVが持つ「家族車」的な機能美も備わっている点を評価したい。いよいよFMCを迎えより実用性の度合いが増したようだが、あれ?スタイルが先代と比べてイマイチと感じるのは私だけだろうか?
日本車の中心がこの10年で軽・コンパクト・ミニバンへ大きくシフトしたことで、街の風景が劣化しているという厳しい意見もある。ただこれも軽・コンパクト・ミニバンのデザインに対して、観る人がどれだけ「リテラシー」を持っているかによって大きく左右されるものだろう。同じコンパクトカーを観てもその感想は大きく分かれる。大手メーカー各社のコンパクトカーの現行モデルはいずれもデザイナーの意図が少なからず感じられる。マーチ・ヴィッツ・アクア・デミオ・スイフトなどはコンパクトカーデザインの壁(限界)を打ち破りつつあり、世界の最先端を歩んでいると言える。
ここまでコンパクトカーのデザインで白熱している自動車生産国はおそらく日本だけだろう。そんな最激戦区の日本で最古参のデザインにも関わらず、常に「勝ち組」と言える売上を叩き出し続けたクルマがホンダのフィットだ。前述のライバル各車と比べると、決してデザイン面での強烈な個性を持っているわけではなく、むしろ保守的で「機能美」を体現するスタンスに依っている。ちょっと抽象的な表現になってしまったが、要はライバル車と比べて車内が広いだろうと容易に想像できるデザインになっているということだ。実際に車内の容積はクラス随一の広さを誇る。
日本のコンパクトカーがカッコ良くなって、ユーザーの満足度が上がることは、とても結構なことなのだが、なんかとても大事なことを忘れている気がする。コンパクトカーはあくまでも簡易的なクルマであり、どんなに頑張ってみたところで高性能なGTカーをこよなく愛するユーザーからは見向きもされないのが現実だ。日本では軽自動車と普通車の区分があるが、コンパクトカーはトップエンドのGTカーと軽自動車のどちらに近いかといえば、その設計はほぼ軽自動車と同じ程度に簡素化されている。コンパクトカーに乗るくらいなら税金の安い軽自動車を選択するのも自然なことだ。
特に最近のデザインを強調したコンパクトカーが実用車の本分を忘れているとは言わないが、日本専用モデルである軽自動車の進化に比べて「ゆるやかな」上昇という印象がある。ハイブリッド専用モデルのアクアの売れ行きは目覚ましいものがあるが、果たして燃費性能以外の進化をアクアがもたらしたか?というと疑問が残る。普通車のボトムエンドとして驚異的なコストカットの痕だけが痛々しく残り、それでも軽自動車よりも格上だという建前と、100万円〜の本体価格だけが取り柄のクルマだ。
価格で競争するメーカーと価格でえらぶユーザーのどちらが悪いというわけではないが、本体価格が100万円のクルマに多くは期待できない。もし中古ドイツ車で100万円という価格なら10年10万キロは軽く超えていてエアコンは死んでいる個体が頭に浮かぶほどだ。そんな価格で新車が買えてしまうということは、たいして素晴らしいことではないように思う。ましてや100万円のクルマのデザインを改良してスペシャリティカーを作ったとしても、ユーザーの満足度は決して上がらないだろう。
やはり本体価格が100万円台のクルマは第一に実用的であるべきだと思う。4人乗車でも外から見て狭っ苦しく見えないデザインこそが、コンパクトカーに求められる重要な要素だ。その視点で考えると、フィットに加えて日産キューブが人気を博す理由もなんとなくわかる気がする。デザインが良いクルマを選ぶと同時に、実用的であるクルマを選択することが、クルマユーザーとしての「良識」と言える。
結論を言うとホンダ・フィットは「良識」であり「正義」だ。実用性に優れたボディ設計だけでなく、Vテックで5MTという走りのグレードも選ぶことができる。コンパクトカーがしばしば批判される原因の走行性能の低さも、選択次第で回避できるようになっている。やや暴論かもしれないが、家族4人で走るなら「アクアお父さん」よりも「フィットお父さん」の方が常識人だ。アクアやデミオに家族4人を詰め込むのは端から見てイケていない。
コンパクトカーを嫌って「ヴェルファイアお父さん」や「BMW5お父さん」の選択もいいけど、なんか気負っている気もする。最近では「CX-5お父さん」と「ジュークお父さん」が増えているようだが、家族4人乗車ならSUVという選択は極めて妥当だ。フィットにはそんなSUVが持つ「家族車」的な機能美も備わっている点を評価したい。いよいよFMCを迎えより実用性の度合いが増したようだが、あれ?スタイルが先代と比べてイマイチと感じるのは私だけだろうか?
2013年7月3日水曜日
ホンダCR-Z 「遅かれ早かれスポーツカーはHV。先見の明だけでも惚れる。」
会社員のCさん(27)の愛車は「ホンダCR-Z」だ。発売1ヶ月で10000台の注文があった話題のクルマだったということもあり、今では2年落ちの程度の良い中古が150万円以下で買えてしまう。今狙い目のとてもお買い得なクルマだ。Cさんもクルマにあまりコストを掛けたくないので、中古で購入した。廉価グレードのベータレーベル・約2万km走行で140万円だった。
このクルマは一般には「スポーツカーには程遠い内容」などと酷評されたりしている。しかしCさんはこう言う「クルマ評論家ほど当てにならないものはない。彼らが酷評する『スポーツカーじゃないクルマ』は実際に所有すると楽しいクルマが多い。」
50歳代以上が多数を占めるクルマ評論家の「価値観」など、Cさんのような若くて優秀な世代にはまったくと言っていいほど響かない。
実際にクルマを取り巻く環境が大幅に変わったとされる2000年代前半のクルマ評論を今紐解いてみると、そのあまりに「空っぽ」の内容は酷い限りだ。試しにアマゾンで価格1円で並んでいるような本を買って読んでみるとよくわかる。割と好きなライターの著作物だからといって追いかけて読んでみると、その痛すぎる内容に絶句したりする。別に彼らが特別に悪いわけではない、技術発展の目覚ましい分野の著作物はどうしてもこうなってしまうようだ。
それでも当時の若者の為のクルマをことごとく叩きのめした2003年頃の評論はその痛々しさがかなり「強烈」だ。トヨタが若者向けに発売した「アルティツァ」やヤマハ製の190psのNAエンジンを搭載した「カローラ」(フィールダー・ランクス)などを、発売中止になったスカGやRX-7、シルビアを引き合いに出して「酷評」するものがとても多い。今の感覚からすると、シルビアはともかくスカGやRX-7と比較するクルマではない。それにアルティツァや高性能カローラは200万円程度の価格設定はかなり魅力的に思える。当時はマークⅡやスカイラインがまだまだその価格帯以下のクルマだという感覚があったようなので割高に感じるのも無理はないが・・・。
10年前の「狂騒」はもう評論家の間ではとっくに過去のモノになってしまったようだ。今もなお何の反省もなくトヨタ86やらホンダCR-Zに牙を剥くライターが後を絶たない。ハッキリ言ってこんな評論は、これからクルマ人生をスタートさせる若者にとっても「百害あって一利なし」だ。いったい過去のどのクルマを持ってきたらトヨタ86の性能に対抗できるというのか? せいぜいマツダRX-7やRX-8といった世界的なスポーツカーと比べない限り、トヨタ86が評価を落とすことはないだろう。それでも多くの若者がそんな根拠無しの評論を読んで「シルビア」だの「スープラ」だのといったかつてのスポーツカーに、最初から手を出すケースがあるようだ(もちろん状態の良いモノは少ないから、乗りたい人は焦るのだろうが・・・)。
Cさんは思う。シルビアやFD(RX-8)の中古車を150万円で購入したとしても、状態の良いものはほとんど無いので、満足に走らせられないだろうし、ちょっと走れば何らかのトラブルに見舞われてしまう可能性が高い。だったらその150万円を使って、もっと程度の良いマツダロードスターやCR-Zを買ったほうが絶対に「効用」は高いし、維持費もかなり安く済むだろう。無理してFDを購入しても、まったく運転を楽しめなくて「モニュメント」と化している人も多い。この「置物」に数百万円を費やすような若者に幸せなカーライフが訪れるとはとても思えない・・・(私の知り合いにも5年でたった3000キロしか走っていない丸目のインプSTIを所有している方がいる)。
なぜカーメディアはいつまでも古くからの読者に媚びてFDやらインプSTIやらにこだわるのだろうか? そしてどの口で「クルマ離れの原因はメーカーや行政にある」などと放言するのだろうか? 明らかに「若者のクルマ離れ」を招いているのは、あなた方の「非社会性」「非常識」の塊のような評論が、若者達に誤ったクルマ文化を伝えたという認識はあるのだろうか・・・。
CR-Zやロードスターの性能に不満を感じる道なんて日本を走る限りはまずあり得ないだろう。ATでもパドルシフトやスポーツモードが付いているのだから、低速ギアできっちりとエンジンを回してあげれば、R35GT-Rにだってそう簡単には煽られないだろう。しかも峠に入ってしまえば、300ps以上のクルマよりも断然に楽しく走れる。もしこのクルマがつまらないという人がいるならば、クルマの楽しみ方が良く分かっていないのではないかと思う。そういう大切なことをしっかりと伝えることがカーメディアの使命だと思うのだが・・・。
このクルマは一般には「スポーツカーには程遠い内容」などと酷評されたりしている。しかしCさんはこう言う「クルマ評論家ほど当てにならないものはない。彼らが酷評する『スポーツカーじゃないクルマ』は実際に所有すると楽しいクルマが多い。」
50歳代以上が多数を占めるクルマ評論家の「価値観」など、Cさんのような若くて優秀な世代にはまったくと言っていいほど響かない。
実際にクルマを取り巻く環境が大幅に変わったとされる2000年代前半のクルマ評論を今紐解いてみると、そのあまりに「空っぽ」の内容は酷い限りだ。試しにアマゾンで価格1円で並んでいるような本を買って読んでみるとよくわかる。割と好きなライターの著作物だからといって追いかけて読んでみると、その痛すぎる内容に絶句したりする。別に彼らが特別に悪いわけではない、技術発展の目覚ましい分野の著作物はどうしてもこうなってしまうようだ。
それでも当時の若者の為のクルマをことごとく叩きのめした2003年頃の評論はその痛々しさがかなり「強烈」だ。トヨタが若者向けに発売した「アルティツァ」やヤマハ製の190psのNAエンジンを搭載した「カローラ」(フィールダー・ランクス)などを、発売中止になったスカGやRX-7、シルビアを引き合いに出して「酷評」するものがとても多い。今の感覚からすると、シルビアはともかくスカGやRX-7と比較するクルマではない。それにアルティツァや高性能カローラは200万円程度の価格設定はかなり魅力的に思える。当時はマークⅡやスカイラインがまだまだその価格帯以下のクルマだという感覚があったようなので割高に感じるのも無理はないが・・・。
10年前の「狂騒」はもう評論家の間ではとっくに過去のモノになってしまったようだ。今もなお何の反省もなくトヨタ86やらホンダCR-Zに牙を剥くライターが後を絶たない。ハッキリ言ってこんな評論は、これからクルマ人生をスタートさせる若者にとっても「百害あって一利なし」だ。いったい過去のどのクルマを持ってきたらトヨタ86の性能に対抗できるというのか? せいぜいマツダRX-7やRX-8といった世界的なスポーツカーと比べない限り、トヨタ86が評価を落とすことはないだろう。それでも多くの若者がそんな根拠無しの評論を読んで「シルビア」だの「スープラ」だのといったかつてのスポーツカーに、最初から手を出すケースがあるようだ(もちろん状態の良いモノは少ないから、乗りたい人は焦るのだろうが・・・)。
Cさんは思う。シルビアやFD(RX-8)の中古車を150万円で購入したとしても、状態の良いものはほとんど無いので、満足に走らせられないだろうし、ちょっと走れば何らかのトラブルに見舞われてしまう可能性が高い。だったらその150万円を使って、もっと程度の良いマツダロードスターやCR-Zを買ったほうが絶対に「効用」は高いし、維持費もかなり安く済むだろう。無理してFDを購入しても、まったく運転を楽しめなくて「モニュメント」と化している人も多い。この「置物」に数百万円を費やすような若者に幸せなカーライフが訪れるとはとても思えない・・・(私の知り合いにも5年でたった3000キロしか走っていない丸目のインプSTIを所有している方がいる)。
なぜカーメディアはいつまでも古くからの読者に媚びてFDやらインプSTIやらにこだわるのだろうか? そしてどの口で「クルマ離れの原因はメーカーや行政にある」などと放言するのだろうか? 明らかに「若者のクルマ離れ」を招いているのは、あなた方の「非社会性」「非常識」の塊のような評論が、若者達に誤ったクルマ文化を伝えたという認識はあるのだろうか・・・。
CR-Zやロードスターの性能に不満を感じる道なんて日本を走る限りはまずあり得ないだろう。ATでもパドルシフトやスポーツモードが付いているのだから、低速ギアできっちりとエンジンを回してあげれば、R35GT-Rにだってそう簡単には煽られないだろう。しかも峠に入ってしまえば、300ps以上のクルマよりも断然に楽しく走れる。もしこのクルマがつまらないという人がいるならば、クルマの楽しみ方が良く分かっていないのではないかと思う。そういう大切なことをしっかりと伝えることがカーメディアの使命だと思うのだが・・・。
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