2014年2月10日月曜日

ホンダ・ヴェゼル「日本車繁栄の象徴」

  ちょっと乱暴な言い方ですが、実用車レベルでの「日本車」の性能は間違いなく世界最良と言い切っていいと思います。日本人は一般的に自動車産業の親和性は非常に高いと思いますし、なによりとても優秀な人材が自動車メーカーへと集まっています。クルマの信頼性という面でも、乗り心地などの感覚的な面でも突き詰めれば、日本がもっとも優秀な結果を出していると言えます。

  それでも自動車の専門家を自認するような人々が書くレビュー(プロのレビュー)を読むと、小学生でも分かる「日本車が最高」という常識が間違っているのか思うような「???」な感想を持つ時がたまにあります。「常識」という言葉を楯に話を進めるのもバカっぽいので・・・、それでは日本で販売されているどのクルマが実際にドイツ車や韓国車よりも明確に下回るのか?と考えると、少なくとも日本車が輸入車ユーザーにボロクソに言われるような決定的な事柄なんてそれほど見当たりません。

  全てはかつて確実に存在した日本と欧州の使用環境の差がそのままクルマ作りに反映されて、その差異を極めて恣意的な視点で比べた時に日本車が分が悪いことも起こるのでしょう。しかしカローラやプリウスをなんでわざわざ欧州車と比べなきゃいけないのか?という素朴な疑問が湧いてきます。そういう土俵に日本車を挙げるならば、欧州市場を制圧しようと意気込む、かつての「三菱デボネア」、今の「マツダアテンザ」「日産GT-R」といった野心的なクルマだけでいいのではという気がします。欧州向けのワゴンを用意しないレクサスのクルマですら安易に欧州車と比較するのはお門違いだと思います。

  そして何よりもクレイジーな事実は、BMWやメルセデスが日本に近い「成熟市場」向けに日本車に擦り寄ったクルマ作りを始めていることです。現行のBMW1や3シリーズはもはや日本車と同じ味付けといってもいいくらいです。かつてのBMW車の良さ(味わい)を欲するユーザーには、ディーラーから必ず「Mスポ」というオプションを奨められます。そして欧州メーカーがいま必死になって開発しているのが日本流のミニバンだったりします。

  アウトバーンを200km/hで走る必要が欧州でもほとんどなくなってきて、日本と同じように背が高い実用的なクルマが増えているという事情が背景にあります。BMWもメルセデスも今後日本車が得意なミニバンやエコカーを片っ端からパクっていくはずです。おそらく欧州市場にホンダが日本で絶賛発売中の「Nワン」や「Nボックス」といった軽自動車を持っていけば、彼の地の人々は泣いて喜ぶのではないかという気がします。後席のシートが自由に動くなんてクルマはほとんど無いでしょうから・・・。

  BMWやメルセデスの動向から考えるに日本メーカーの正当性がハッキリと証明されてめでたしめでたし!なのですが、1980年代から絶えず日本メーカーは既に孤高の道を突き進んでいて、その目指す先はドイツ車や韓国車などではなく、他でもないライバルの日本車なわけです。特にトヨタとホンダはお互いに創業以来ほかの自動車メーカーの傘下になったことがない「純血種」であり、独自の経営方針に絶対の自信を持つメーカー同士の「つば迫り合い」には鬼気迫るものがあります。お互いに絶えず相手のクルマを細かく分析し、相手の狙いを先読みして出し抜こうと激しい情報戦を繰り広げています。フィットHVとアクアの燃費対決などはもはや茶番に過ぎず、乗り心地を無視すれば50km/Lくらいは余裕なんだとか・・・。

  日本市場をハイブリッドで埋め尽くしたといっていいトヨタとホンダの2000年代の戦いの第1ラウンドは終結し、ハイブリッドが常識になった市場での第2ラウンドが始まったところです。蛇足ですが、200万円台のクルマにHVを積むという世界最先端の土俵にドイツメーカーが自力で立つことは不可能でしょう。第1ラウンドで完勝したトヨタにはやや駒不足な感じがあります。復讐に燃えるホンダが優れた商品力を発揮することは規定路線だったかもしれません。そんなホンダのもっとも強力な1台がこのヴェゼルというわけです。

  あえてちょっとアレな書き方をすると、「ヴェゼルは日本人の良識の証」といったところでしょうか? SUVというパッケージは世界中で大ヒットしていますが、もともとは地雷や爆弾テロへの耐性を求めるVIPの要求で作られたという経緯があります。もちろん世界に広まった汎用SUVにはそんな性能はなく、トラックと車台と共用できるという生産上の合理性がその普及の原動力だったと言えます。道路事情が極めて悪い地域では走破性が大変重宝されるわけですが、道路管理が行き届いた日本に近い環境では川を渡る性能なんて要らないわけです。ルノーの支援を受ける前の日産は、エクストレイルというたった1台のクルマの為に川を渡る技術を極めるなど不合理な仕事に血道を上げていたと、経営再建に取り組んだ担当者が自嘲気味に語っています。

  鉄道も高速道路も整備された日本でSUVに乗る意義とは何なのか? あえて納得いく答えを出すとするなら、JRの電車に乗るより箱根登山鉄道の電車に乗る方がドキドキする感覚に近いかもしれません。いや2階建ての列車の展望の良さに近いのかも。まあ程度の差はあれどもこの感覚は肯定すべきだと思います。ただし本格SUVには多くのネガティブな要素も同時にあるわけです。輸入車のSUVを調べれば分かりますが、1700kgといった高級車並みの重量を誇るものがほとんどです。車重は燃費だけでなく、あらゆる部品の消耗を早めますし、安全な走行に大きな影響を与えます。

  そこでホンダはこのSUVのあり方に徹底的にメスを入れました。厳密に言うと先にアイディアを出したのは日産ではありますが・・・。とりあえず「軽量化」をして魅力を損なうことなく、SUVを安全で負担の少ないクルマにしました。ホンダ・ヴェゼルのパッケージを考えると、極めて理性的に考えられたクルマだと結論するしかないわけですが、200万円足らずのこの小型SUVにハイブリッドを仕込むという仕事をやり遂げたのが、世界でホンダが初なのです(スバルもHVをターボ代わりにしていますが・・・)。世界80以上の国でクルマが作られているそうですが、これまで誰もやろうとしないかったということに驚きすらあります。

  ホンダがさくっと示した理性に対して、ポ◯シェカ◯エンやB◯W X◯って一体何なの?といつも思います。ドイツ車ばかりを目の敵にしてもしょうがないですね。マ◯ダC◯5やト◯タハ◯アーってまだまだ新しいクルマなんですが、あまり先々のことを考えずに惰性で作ってしまった印象すらありますね。まあそれくらいにこのヴェゼルというクルマには正義が宿っています。カーメディアの評価は後手後手だったにも関わらず発売1ヶ月で3万3千台!これは日本のユーザーの賢さを示すものですし、台数にも納得です。かつてプリウスが示した日本車の圧倒的な先進性を引き継ぐ次世代の「スーパースター」が現れたといってもいいでしょう。


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