2013年9月12日木曜日

フィット「最善を尽くしたクルマ」

  日本車のデザインには個性がないとよく言われる。軽自動車・コンパクトカー・ミニバンのデザインが各メーカーともに似たり寄ったりで、トラックを除く乗用車の大部分をこれらのクルマが占めるからそう感じるのも無理はない。対比される輸入車の多くは高級車であるからより一層、日本メーカーのデザインはダメだと感じる人もいるようだ。現実にはどこの国でも平凡なデザインの実用性の高いクルマが多く目立つし、モーターショーを見ても日本メーカーのデザイン力が特に低いということはないと思う。

  日本車の中心がこの10年で軽・コンパクト・ミニバンへ大きくシフトしたことで、街の風景が劣化しているという厳しい意見もある。ただこれも軽・コンパクト・ミニバンのデザインに対して、観る人がどれだけ「リテラシー」を持っているかによって大きく左右されるものだろう。同じコンパクトカーを観てもその感想は大きく分かれる。大手メーカー各社のコンパクトカーの現行モデルはいずれもデザイナーの意図が少なからず感じられる。マーチ・ヴィッツ・アクア・デミオ・スイフトなどはコンパクトカーデザインの壁(限界)を打ち破りつつあり、世界の最先端を歩んでいると言える。

  ここまでコンパクトカーのデザインで白熱している自動車生産国はおそらく日本だけだろう。そんな最激戦区の日本で最古参のデザインにも関わらず、常に「勝ち組」と言える売上を叩き出し続けたクルマがホンダのフィットだ。前述のライバル各車と比べると、決してデザイン面での強烈な個性を持っているわけではなく、むしろ保守的で「機能美」を体現するスタンスに依っている。ちょっと抽象的な表現になってしまったが、要はライバル車と比べて車内が広いだろうと容易に想像できるデザインになっているということだ。実際に車内の容積はクラス随一の広さを誇る。

  日本のコンパクトカーがカッコ良くなって、ユーザーの満足度が上がることは、とても結構なことなのだが、なんかとても大事なことを忘れている気がする。コンパクトカーはあくまでも簡易的なクルマであり、どんなに頑張ってみたところで高性能なGTカーをこよなく愛するユーザーからは見向きもされないのが現実だ。日本では軽自動車と普通車の区分があるが、コンパクトカーはトップエンドのGTカーと軽自動車のどちらに近いかといえば、その設計はほぼ軽自動車と同じ程度に簡素化されている。コンパクトカーに乗るくらいなら税金の安い軽自動車を選択するのも自然なことだ。

  特に最近のデザインを強調したコンパクトカーが実用車の本分を忘れているとは言わないが、日本専用モデルである軽自動車の進化に比べて「ゆるやかな」上昇という印象がある。ハイブリッド専用モデルのアクアの売れ行きは目覚ましいものがあるが、果たして燃費性能以外の進化をアクアがもたらしたか?というと疑問が残る。普通車のボトムエンドとして驚異的なコストカットの痕だけが痛々しく残り、それでも軽自動車よりも格上だという建前と、100万円〜の本体価格だけが取り柄のクルマだ。

  価格で競争するメーカーと価格でえらぶユーザーのどちらが悪いというわけではないが、本体価格が100万円のクルマに多くは期待できない。もし中古ドイツ車で100万円という価格なら10年10万キロは軽く超えていてエアコンは死んでいる個体が頭に浮かぶほどだ。そんな価格で新車が買えてしまうということは、たいして素晴らしいことではないように思う。ましてや100万円のクルマのデザインを改良してスペシャリティカーを作ったとしても、ユーザーの満足度は決して上がらないだろう。

  やはり本体価格が100万円台のクルマは第一に実用的であるべきだと思う。4人乗車でも外から見て狭っ苦しく見えないデザインこそが、コンパクトカーに求められる重要な要素だ。その視点で考えると、フィットに加えて日産キューブが人気を博す理由もなんとなくわかる気がする。デザインが良いクルマを選ぶと同時に、実用的であるクルマを選択することが、クルマユーザーとしての「良識」と言える。

  結論を言うとホンダ・フィットは「良識」であり「正義」だ。実用性に優れたボディ設計だけでなく、Vテックで5MTという走りのグレードも選ぶことができる。コンパクトカーがしばしば批判される原因の走行性能の低さも、選択次第で回避できるようになっている。やや暴論かもしれないが、家族4人で走るなら「アクアお父さん」よりも「フィットお父さん」の方が常識人だ。アクアやデミオに家族4人を詰め込むのは端から見てイケていない。

  コンパクトカーを嫌って「ヴェルファイアお父さん」や「BMW5お父さん」の選択もいいけど、なんか気負っている気もする。最近では「CX-5お父さん」と「ジュークお父さん」が増えているようだが、家族4人乗車ならSUVという選択は極めて妥当だ。フィットにはそんなSUVが持つ「家族車」的な機能美も備わっている点を評価したい。いよいよFMCを迎えより実用性の度合いが増したようだが、あれ?スタイルが先代と比べてイマイチと感じるのは私だけだろうか?

 

4 件のコメント:

  1. お久しぶりです、元「BMW5お父さん」ことyatsumeです。
    CTSならもっと気負ってると思われそうですね;

    一時期ブログの更新が無かったんで心配?してました。
    最近また精力的に更新なされてて、楽しく拝見してます。

    初心者ブログの「身長」の件、爆笑でした〜
    「今更?」ていうツッコミが…。

    車体の大きさというよりも、私はシートをかなり重視しますね。
    国内専用車の多くはシートの作りが小ぶりですし、
    特に座面長の足りない車種が今までの経験上多いですね。
    調節幅も少ないですし、チルト、テレスコが???な物とか。

    新型フィットはリアがボルボのV系丸パクリで
    見てるこっちが恥ずかしいです。

    取ってつけたようなリアガラス両面のアレ、いらないのに。

    返信削除
  2. yatsumeさんこんにちは
    コメントありがとうございます。

    自分がクルマを運転する姿を外から見る機会がいままで無かったので、
    アウディTTがいいなと思っていた時期もありましたが、今思うとゾッとしますね。

    あんまり言いたくはないですが、アクセラに家族4人みたいな光景を見ると残念無念な想いがします。
    ということで「CTSお父さん」と「ランドローバーお父さん」は美学を感じますよ。

    CTSはBMの6発と比べて、燃費・ハンドリング・サス剛性などいかがですか?

    返信削除
    返信
    1. HIROBEEさん? こんばんは!
      こちらこそレスどうもです。

      CTS、E61と比べると相対的に少し「大人」になった感じでしょうか。
      E61 プレミアム「スポーツ」セダン
      CTS 「プレミアム」スポーツセダン てイメージです。
      キャデラックというブランド自体はジャーマン3より確実にアッパークラスですが
      日本ではあまり認知されておらず、この辺でも民度の低さが寂しいところです。

      一番近い乗り味はレクサスGSです。
      モードをS+にしたときの挙動がかなり相似形かと。
      元々方向性は同じとこ向いてますもんね。

      安っぽい直4ターボと違い最初期の立ち上がりは穏やかながらトルクフルで
      トルクの出方を右足だけで自在に操る感じは、エンジンとトルコンのマッチングを
      ちゃんとやってるんだろうなと感じさせます。

      そのまま踏み続ければ(一般道ではこの段階でオーバー)後ろからシートを
      蹴っ飛ばされたような加速が訪れます。4500rpmあたりのエグゾーストは最高です!
      もう少し慣らし必要なんですが、ついつい喝を入れてしまいます。

      V6の3000ccでNA、273馬力ですが、車重があるため軽快感は残念ながらありませんね。
      その意味でもスポーツワゴンの方を選ばなくて正解だったかと。
      ただ余計な過給器などがないため吹け上がりは気持ちいいです。
      息継ぎも雑味もなく、綺麗に上まで回ります。

      フロントはDWB、リアはマルチリンク、最近のなんちゃってジャーマンセダンと違い高級車の王道です(笑)
      E61は常にフラット基調がデフォルト設計ですが、CTSはサスが多少動きます(当たり前か)。
      同じ道を走ったE61で感じた突き上げはほどんど感じられなくなりました。
      これを極上の乗り味と取るか、インフォメーションの希薄と取るかは人それぞれでしょう。

      ロールも若干許容しますが、こちらもバリアブルレシオなどの合成調味料なし、
      油圧のみのステアのキレがいいので鼻先がしっかりインに向き、FRらしい操る楽しさがあります。
      (逆に言えばBMWのアクティブステアはドーピングしてあの切れ味ですから、驚愕に値します。)

      あぁ、燃費ですか、聞きますよね、それ(笑)
      街乗りで6〜7、夜間で8に届くかどうか。
      高速で100+αのクルコン走行で12くらいです。
      E61と変わらないか、少し悪いくらいですかね。
      排気量考えれば同等と考えてもいいかな、と。
      実はレギュラー仕様なんですが、性能考えてハイオク入れてます。メーカー推奨ですし。

      遮音はCTSの圧勝です。5.1chのBOSEがいい仕事をしてくれてます。
      意外とここが最後の1押しになったんですよね。
      Acidmanは私も好きなんですが綺麗に鳴りますよ。夜のドライブはインパネのライティングを
      含め雰囲気は最高です。人間工学上、暗順応を考えてライティングは全てアンバーにしている
      BMWも好きでしたけど、印象は全く違いますね。助手席の家内に久々見蕩れました(笑)

      欠点はなんでしょう、リセール、ですかね。
      イニシャルコストがかなり抑えられたのでケースバイケースではありますが
      私の場合はそれを含めて購入していますので、ネガではありません。

      見切りは悪いです。チョップトップかってほどグラスエリアの天地が少なく、
      ウェストラインが高いので。
      引き換えにしたエクステリアデザインは秀逸さに価値を感じるなら、これもネガじゃないですね。
      バックモニターも上級グレードのプレミアムには標準ですし。まあ使いませんが。
      ナビの使い勝手もボルボあたりのクズナビに比較すれば充分使えるレベルです。
      (国産純正はまだしも、最新社外とはもちろん比較できません。)
      BMWでいうi-drive的なコマンドはありませんが、元々アレも使いづらく思っていたので
      タッチパネル式のCTSは操作性もまあまあです。

      その分中古車で格安、程度のいいものが新型の登場を控え今後も増えてくるでしょうから
      狙い目だと思います。今でも結構タマありますよね。ぜひお薦めします。

      ちなみに私の身長は175ですが、シートは十分すぎるほどたっぷりしてます。
      アメ車と聞いてイメージするシートとは違い、革がパツパツに張ったものでありながら
      サポートもしっかりしており、なおかつベンチレーションも標準ですから
      革シートのネガが全く潰されています。

      これで550万(値引きもGJ ただしGM系Dに限る)、ジャーマン3なら3、C、A4以下しか買えません。
      ドイツ車の真価は5、E、A6からにもかかわらず、ですからドイツ車て高いですね(笑)
      トランクもダブルヒンジだったりしてこういう細かいとこ見てもちゃんとお金を掛けるところを
      しっかりわかってる人がつくってるんだなと変に感心します。
      高級とかプレミアム謳ってる車がグースネックだと興醒めですよね…。

      長々と徒然に書きましたが、何となくイメージ湧きましたでしょうか。
      今後のHIROBEEさんの選択肢に入れていただけると嬉しいです(笑)

      削除
    2. とても詳しい感想ありがとうございます。

      クライスラーがメルセデスで、フォードがマツダっぽいという印象はあるのですが、GMのベースであるオペルとホールデンのクルマを目にする機会がなかなかないので、一番イメージしにくいブランドでした。

      ホールデンのコモドアをベースにした、ボクスホール・VXR8が前々からとても気になっていて日本で正規販売を期待しています。VXR8はフルサイズセダン改造のマッスルカーですが、欧州(英国)でかなりの反響があったようです。VXR8とキャデラックCTS-Vが兄弟車なのかな?という気がします(未確認)。

      コモドアも右ハンドル生産国のクルマとして、正規代理店ができ日本への販路が拡大されているようなので、豊富なラインナップを今後GMが本気で売りにくれば、現行シーマなんかは格負けしちゃいそうな気がします。

      とりあえずアテンザは峠を走れる長距離向けとして去年の7月に納車されたのですが、1年1万5千キロ過ぎてからサスもエンジンも格段に良くなりました。新車保障が切れるまであと4年なので、それまでに2号車を買う予定です。CTSも私が普段ブログで強調している優秀なサスとショートストロークエンジンを兼ね備えた希少なモデルなので有力な候補ですよ。

      ACIDMANいいですよね「風がふくとき」や「飛光」など聞きながら走ると・・・、スピード出過ぎちゃいますね。

      削除