トヨタの系列販売店の中で一番の苦境にあると言われているのがトヨペット。東京トヨペットはクラウンの取り扱いが認められていますが、その他のトヨペット店はフラッグシップモデルのマークXにハイブリッドを設定するようトヨタ本社には何度も陳情が行われたようですが、なかなか実現しないまま今に至っています。トヨペット店も2014年になって大人気SUVのハリアーが復活して息を吹き返しつつあるようです。
マークXは「お手軽なFRの高級車」といったクルマなんですが、お手軽でお得なのだから人気が出る!というわけにはいかないようです。「お手軽だったら高級車じゃないだろ!」とクルマのことよくわかっていない人々が、やたらめったらと批判をするのでクルマに詳しい人ならばマークXの悪口を何度と無く聞いたことでしょう。私の考えとしてはBMW3シリーズやメルセデスCクラスが高級車に分類されるならば、マークXも当然に高級車で良いと思います。
このクルマの最大の弱点は日本国内専用として開発されていることです。日本専用なんてスペシャルな普通車を今どき作っているメーカーなんてトヨタ以外にはほとんどないわけですが、どうもグローバルで評価されているクルマの方が説得力があるという、なかなか無茶苦茶な理論でマークXやクラウンは厳しい評価が目に付きます。国内専用車には当然ながら250km/hでアウトバーンを巡航させる性能など要求されません。よってマークXやクラウンはその速度を想定したクルマ作りをせず、もっと日本の実用域での快適性に力点を置いています。250km/h超での高速安定性と実用域での快適性はクルマ作りにおいてトレードオフの関係にあるわけです。
気がつけば、国内市場でマークXのライバルとなるクルマはドイツ車を始めとする輸入車、スカイライン、アコード、レガシィ、アテンザとどれも高速安定性を追求したクルマばかりになりました。ただしこの中でどれが高級車として相応しい性能を有しているかというと、「乗り心地」「静粛性」の観点ではマークXが最も優れています。これはこの2点では絶対に負けないというトヨタの伝統が生きているからです。トヨタのクラウンは1955年から作られる長い歴史を持ったモデルですが、この積み上げたFMCの果てにトヨタは世界でもっとも静かなセダンを作り上げます。
このクラウンのノウハウを詰め込んだセルシオを旗艦としてアメリカでレクサスを創設します。当時8気筒のセルシオが、12気筒を積むメルセデスやBMWを超える静粛性を発揮し世界を驚かせました。「静かな国・日本」からやってきた驚異のスーパーサルーンはアメリカの高級車市場を席巻しました。トヨタの12気筒センチュリーはさらに静かに走ったそうです。
よくドイツ車に乗っている人が、「ボディが堅牢で、中はびっくりするぐらい静かだよ」とか言っています。確かに100万円そこそこの日本車よりも静かかもしれませんが、決してメルセデスやBMWは「静かな」メーカーではありません。実際にBMW3シリーズとマークXを乗り比べれば、「乗り心地」も「静粛性」もハッキリとトヨタが上回っています。それでも評論家がBMWを強調するポイントとしては、高速旋回への対応としてサス剛性が高い(乗り心地は悪くなる)ことと、ハンドリングの精度、ブレーキやアクセルのレスポンスが良いといった点です。
実際に3シリーズとマークXを設計レベルから比較すれば、トヨタの採用しているシャシーの方がD/Eセグ高級車向けであらゆる点で構造上の優位性を持っています。3シリーズのシャシーはC/Dセグ向けのBMW・L7プラットフォームで、現行の3シリーズのボディが上限ギリギリの設計です。簡単に言うと3シリーズのライバルは実はマークXではなく、北米や欧州に輸出されているカローラなのです。「カローラクラス」のシャシーに高級車調のボディを載せた3シリーズと、「クラウンクラス」のシャシーを流用してやや小振りのキャビンを付けたマークXが同じ土俵で比べられているわけです。
そして評論家の皆様は、「乗り心地」ではなく「乗り味」を引き合いに出して、この両者を比べます。それはトヨタがマークXを「スポーティセダン」と言って憚らないからなのですが、林道をマークXとカローラで同じエンジン積んで走ったらどっちが楽しいか?と比べているに過ぎません。小型なボディにパワフルなエンジンを載せて楽しいクルマを作るという欧州車の伝統を否定するつもりはありませんが、それを高級車らしさと誤解していらっしゃる方々が多いのが残念です。
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