2013年11月19日火曜日

カローラフィールダー 「ワゴンの理想型じゃないですか?」

  カローラはあらゆる意味で時代の先端を走っています。カローラが高級になれば世界中のクルマが高級志向になりましたし、カローラがコストダウンを図れば、メルセデスのような高級ブランドも後を必死で追いかけるようにコストダウン路線を突き進んでいます(笑)

  やたらとゴテゴテしたクルマが多過ぎてクルマの本質が見えづらくなってますよね。全てのムダを取り除いたクルマというのがあっていいと思うのですけど。高級車やプレミアムブランドなんて相対的な評価で成り立っているわけだから、「普通」のクルマというのがどっかになければいけない。今やワゴンもドイツ車の影響が強くてやたらと高級になってしまいました。もっと気軽に乗れるワゴンがあっていいはずなんだけど・・・。

  マツダのアテンザワゴンは3代目になって確かにカッコ良くなりました。しかしそれと同時に価格もどんどん上がってとりあえず300万円オーバーって・・・なんだかな。誰の為のワゴンなんだろと思ったりもします。ワゴンなんてもっとシンプルな存在でいいと思うのだけども、マルチリンクを配した高級なDセグのベースに、レザーシート&パワーシートなんて豪華にするイメージがちょっと湧かないのですが・・・。

  そんな自分にピッタリの国産ワゴンと言えば、やはりカローラフィールダーでしょうか。5ナンバーサイズのワゴンという希少車種ですが、愛好家はまだまだ多くFMCでも大きな変更もなく、プレミオ/アリオンみたいなトヨタのプロパー車種になっています。2代前までは、高性能モデルが設定されたりしてトヨタの看板車種的なポジションだったのですが、プリウスが出てからはどうも地味な存在になってしまいました。

  2代前に設定された「1.8Zエアロツアラー」はセリカのエンジンを流用したなかなかファンキーなモデルで、パワーウエイトレシオなら今のトヨタ86に匹敵する実力がありました。ホンダのV-tecに対抗するためにトヨタが作らせた可変バル=タイ搭載のヤマハ製エンジンは直4の名機として知られています。車重も1160kgしかないのでスポーツワゴンとして十分すぎる性能を持っていました。もちろんV-tecをパクったエンジンなのでトルクが細くてMTと組み合わせないとかったるくて使いものにならないものでしたが・・・。

  この伝説のモデルが輝きを放ったのもそうですが、なによりカローラフィールダーの最大の魅力は車重の軽さです。しかし現行のトップグレード「1.8S」にはCVTしか設定がなく、トップグレードとしてもう少し考えてほしい気がします。もしこのグレードにデュプトロ式AT(パドルシフト)か5MTが装備され、G'sのフルエアロ・バージョンが設定されデザインに高級感が加われば・・・。アテンザよりも300kg軽い設定が生きてくると思うのですが・・・。

  それになんといっても納車時ならバネが柔らかくて間違いなくアテンザよりも乗り心地いいですし、車内の各種装備もトヨタの方が優れている点も多いです。それで100万円も安いとなると、アテンザワゴンももちろんいいクルマですが、カローラフィールダーもなかなかだと思うんですよね。

  トヨタにはこの国内専用モデルのワゴンにもっと自信を持って売り出してほしいと思います。キムタクなんて使わなくても十分に魅力がアピールできるクルマだと思うのですが・・・。最近はグローバルモデルばかりが日本でも幅を利かせてますが、北米向けに作られたハンドリングがゆるゆるなくせに、車幅は1850mmもあるワゴンなんてよくよく考えるとうっとおしいですよね。

 

2013年10月17日木曜日

マツダ・アテンザ 「盲目的なマツダ愛か?それとも現実的な選択か?」

  ある観点からクルマを分類するとしましょう。日本で販売されるクルマは一部の特殊車両を除き、大きく3段階にわけることができます。それはずばり・・・

[レベル1]近所のスーパーに買い物に行けるクルマ
[レベル2]郊外のイオンなどのショッピングモールに堂々と繰り出せるクルマ
[レベル3]都心のデパートや高級ホテルに乗り付けられるクルマ

  クルマを買うときはこの3つをシビアに念頭に置いて選ぶべきだと思うのです。たとえ他車よりも若干性能がよかったとしても、本体価格がレベル1で200万円、レベル2で300万円を超えるようだと価格に見合っていないと断言してもよいでしょう。国産車でこの条件を超えてしまうクルマは滅多にないですが、ランエボX(レベル2相当)などのスポーツカーやレクサスCT(レベル2相当)などがこの観点ではやや高価すぎるのかもしれません。

  輸入車になるとBMW1・3・X1・X3やメルセデスC・CLA・SLK(いずれもレベル2相当)などプレミアムブランドの下級グレードでは該当車が続出します。それでも新型AクラスやBクラス、アウディA1(いずれもレベル2相当)など適正価格へ収まっているものも増えています。

  逆に200万円以下でレベル2だったり300万円以下でレベル3というクルマも、よく探せば存在します。200万円以下でレベル2のクルマはスバルインプレッサとマツダアクセラです。そして300万円以下でレベル3のクルマはスバルレガシィとマツダアテンザでしょうか。この2社の中型モデルは文句無しにお買い得です。

  レガシィも来年にはFMCを迎えて、いよいよD/EセグセダンとしてレクサスGSやアテンザと同等のサイズへ生まれ変わり、デザインもさらに高級車然としたものへ「脱皮」すると言われています。かつての5ナンバーの「ツーリングワゴン」の時代のレガシィとは似ても似つかないセダン専用車になり、ワゴンは別の車名で現行よりもむしろ小さくなるのだとか・・・。

  この新型レガシィに先鞭とつけたのが、今のアテンザです。まあスバルはマツダのやる事成す事にやたらとご執心です。いよいよマツダが起死回生の1台として、"大衆車"の殻を破るべく、作ってしまった”マーベラス”なデザインは、世界で静かに波紋を拡げています。「プレミアムデザインっていったい何?」という疑問が一斉に噴き出し始め、盟主のメルセデスは先頭を切って値下げを断行・・・、どうやらアテンザは「パンドラの箱」を開けてしまったようです。そしてドイツプレミアムブランドが日本市場に保っていた絶対的な価値を1年も経たない期間で粉々に壊したといってもいいでしょう。

  衝突軽減ブレーキ、キャパシタ、wi-fi・・・、マツダ対策にメルセデス、BMW、アウディがてんやわんやの大騒ぎです。デザインや動力性能じゃ勝てないから、せめてオプション装備だけでもマツダに追いついておこう!ってもはや完全に化けの皮が剥がれてませんか?

  なんでアテンザに勝てないようなデザインで、性能もイマイチのクルマが500万円もするんだ? これが現行の3シリーズやCクラスに対する偽らざる率直な感想です。乗ってみればアテンザの方が静かだし、路面不整への対応もできている。”ベイビー・メルセデス”もそれなりにいいかもしれないですが、いくらなんでもアテンザとの価格差が全く示せていないわけです。その結果、アテンザには輸入車からの乗り換えが殺到したようです・・・。

  "ベイビー"は東京で乗るにはあまりにも恥ずかし過ぎます。女性が乗る分には素敵だと思うのですが、男が乗ってはいけないクルマです。金持ちのドラ息子が20歳そこそこで乗っているイメージのクルマで、実際に高速のSAで見ていると職業不詳の怪しげな若者グループが現行モデル(204系/F30系)を御用達にしていたりします。まあそういうクルマです。まともなカーライフを望む人は間違っても近づかない方がいいでしょう。500万円したからと言っても特別どうということはない「普通のクルマ」に過ぎません。頑張って買ったところで、メルセデスだ!BMWだ!っていう過剰な期待はことごとく裏切られるはずです。(決して悪いクルマじゃないですが・・・)

  新型アテンザに殺到したユーザーは、「マツダファン」と「現実派」の2種類です。「現実派」の多くは、これだけクルマがあるのに、現行のラインナップにどれも満足できなかった人々です。つまらないクルマばかりが蔓延る風潮の中で、いっそクルマなんていらないかな?なんて思い始めていたかもしれません。そういう「宙ぶらりん」な人々を納得させて吸い込むだけのクルマを、あれだけ多作のメルセデス・BMW・アウディがここ数年1台も作れなかったわけです。

  「only Mercedes」や「BMWER」を開いても1ページ目から最後まで何一つ心に引っかかるものもなく、毎号終わっていきます・・・。ちょっとオーバーですが、読後はクルマ好きにとって自殺したいような気分が訪れたりします。結局のところジャガー、マセラティ、マツダ・・・たったこれだけがデザインだけで気持ちを熱くさせてくれるブランドなのでしょう。それならばマツダを買って好きな彼女とドライブで「現実逃避」するのが正解では? クルマに対してやや鬱病気味な頭にそんなことがいつも浮かんできます・・・。

  

  

  

2013年10月2日水曜日

トヨタ・オーリスRS 「AE86の正当な後継車は・・・」

  去年、トヨタとスバルが久々のFRスポーツカーとして開発した「86/BRZ」は、話題を先行させるためか車名を「86」として、かつてのAE86の後継車であるかのようなプロモーションを繰り広げました。その甲斐もあって販売は非常に好調に推移していて、トヨタとしてもスポーツカー市場の可能性を再認識できたと思います。海外では廉価なスポーツカー専用設計車として最大級の賛辞をもって迎えられました。

  日本でもその素性の良さから考えて、車名に関係なく大ヒットしうるポテンシャルを秘めたクルマだったと思います。もし86ではなく違う名前だったならば、あるいは最終的にはもっと売れたかもしれません。もちろん「86」という名前で多くの某漫画のファンを惹き付けることに成功した部分も当然にあるでしょうが・・・。

  しかしそもそもトヨタ86はいったいどういう了見で、AE86の後継車とみなすことができるのでしょうか? AE86はごくごく普通の乗用車に4A-GEという新開発のツインカムエンジンを搭載してスポーティな走りを実現したモデルでした。一方のトヨタ86(FT86)は完全なる専用設計のスポーツカーであり、エンジンもまったく設計が違うスバル製のボクサーエンジン(FA20)を使っています。ハッキリ言って全く別の「家系」のクルマと言えるのですが、プロモーションのために無理矢理に同じ名前を付けてしまったようです。

  AE86に使われていた4A-GEですが、AE92、AE101、AE111と改良を受けながらも使われ続け、最終型セリカ登場の1999年に後継エンジンの2ZZ-GEが登場しバトンを引き継ぎます。AE92以降のトヨタの小型(Cセグ)スポーツモデルはFF車となっていましたが、それでもトヨタはスポーツグレードを欠かさず設定し、セリカだけでは捌けない2ZZ-GEを同クラスの乗用車(カローラフィールダー、カローラランクスなど)に6MTで設定しました。

  この時点での日本市場向けのカローラは欧州向けと基本設計が同じでした。2ZZ-GEを搭載したカローラランクスZエアロは、トヨタが欧州向けに作ったホットハッチです。1.8LのNAながら190psを絞り出す高性能エンジンをヤマハに発注し、このエンジンを載せる事で1997年に登場して欧州を席巻した初代シビックtypeR(EK9)と互角に戦えるクルマをトヨタはしっかり作っています。

  このカローラランクスのプラットホームは、国内のカローラファミリーへと引き継がれず、トヨタの欧州戦略車として、欧州版カローラとなり、そして日本市場ではオーリスという車名に変わりました。ヤマハに発注した2ZZ-GEは見事に予定数を売り切ったのですが、販売に苦慮したトヨタは2006年からZRエンジンへの全面切り替えを行い、オーリスには2ZR-FEという144psの1.8LでNAのエンジンが新たに充当されました。

  ロータス・エリーゼにも2ZZ-GEに引き続き供給されているエンジンで、ミニバンからスポーツカーまで幅広いバリエーションを持っています。まあ汎用エンジンで間違いないのですが。2代目オーリスには新たにRSグレードが設定され、2ZR-FEに6MTを組み合わせたスポーティなユニットは、トヨタ車のナチュラルなスポーツフィールが楽しめる、由緒正しいAE86の後継モデルと言ってもいいのではと思います。

  そんなことをボソボソと言ったところで、世間の認識が変わるわけでもないでしょう。「ハチロク」の後継は「86」と認知されたままでしょうし、オーリスと言えば「シャア専用」というのが相場なんでしょうが・・・。





 

2013年9月18日水曜日

スズキ・スイフト「輸入車乗りに見せつけたい制動力」

  筆者は相当な日本車好きだが、日本市場で主流のコンパクトカーは輸出モデルとは異なった、「国内専用装備」を特別にパッケージされていて、これに関してはやや困惑している。わざわざディーラーまで行かなくてもレンタカーで借りれば、その「スポイル」された性能はある程度はわかる。クルマ好きの中で、レンタカーで使ったコンパクトカーが気に入って購入したという人はよっぽどの変わり者だと思う。それほどに満足できない点が多い。踏んでもすぐには反応しないアクセルや、すぐには効かないブレーキだけでなく、所有欲が湧かないようにわざと作ったような内装を見ると50万円でも高いと感じる。

  メーカー側もその点は十分に考えていて、トヨタ・ヴィッツやホンダ・フィットには「RS」というグレードが設定されている。軽量ボディに110ps程度の1.5Lエンジンを載せ、パドルシフト付きCVTや5速MTでエンジンの好きなところを使えるようにしている。低速ギアで引っ張れればパワー不足は解消される。そしてブレーキ面でのネガを解消するために、FF車でも後輪にディスクブレーキを装着している。これで一応は新型ゴルフのトレンドラインとコンフォートラインとは同等のスペックだ。ただヴィッツRSもフィットRSも本体価格180万円とかなりのお値段で 、ワンクラス上のボディサイズのゴルフが249.9万円なのでゴルフに標準装備された安全装備を、オプションで付ければほとんど差がなくなってしまう。

  ゴルフなどの欧州車はある程度は高いグレードのみが、日本に導入されている。欧州に行けばノックダウンされた低スペックのゴルフがたくさん走っている。何と言ってもカローラに匹敵する販売数を誇るクルマなのだから、日本に来るグレードの方が少数派だ。結論としてはフォルクスワーゲン・トヨタ・ホンダがそれぞれに経営努力をする一方で、それなりのクルマ好きにハイスペックなコンパクトカーを売ろうと、たっぷりの利益を見込んで出した価格がほぼ横並びだったということだ。

  3社ともに「たっぷり」利益を見込んでいる一つの根拠として、この3社を追って世界10位の生産台数を誇るスズキのクルマを見ればよくわかる。スイフトは排気量は小さめの1.2LのNAだが、同様にパドルシフトや5MTで加速に配慮されていて、後輪にディスクブレーキを配する、クルマ好き向けの設計でデビュー当初から設定されていた「XS」で149.1万円。さらに特別仕様車の「RS」はほぼ同内容で142.7万円となっていて、日本のBセグを性能面で引っ張る存在だ。RSはサス剛性を欧州車水準まで締め上げいて、VWを迎え撃つクルマとして遜色ない乗り味だ。

  さらに1.6LのNAで136psを発揮するスイフトスポーツもある。こちらもパドルやMTが当然に装備され、排気量に余裕があることから加速の幅が広がっている。もちろん後輪にはディスクブレーキを配している。価格もMTが168万円でCVTが174.8万円でスペックで上回るのにヴィッツRSとフィットRSよりも安く設定されている。1.6Lになると自動車税の年額は上がるが、それでも4気筒エンジンは一般的に1600~2400ccがベストとされていて、軽量で良く回るという意味では1600ccが至高という意見もある。稀代のエンジンメーカーであるスバルやBMWも次世代の主力エンジンとして1.6Lを考えているようだ。

  よく自動車評論家がしたり顔で「スズキのスプラッシュはいい」と言っているが、日本仕様では選択の幅がなく、ドラムブレーキのみということでドライブフィールを重視する人は敬遠したい。同様にマツダのデミオもドラムブレーキしかラインナップされていない。「足回りのマツダ」からは想像できない欠陥だ。言及する必要はないかもしれないが少し前に話題になったVW・UP!もドラムブレーキのみの設定だ。それでもVWはゴルフとポロの全グレードでディスクブレーキを使っているので、「日本車とはブレーキが違う」というVWユーザーは多い。実際はドイツのテストではマツダや三菱、トヨタにボロ負けしているのだが・・・。

  要点をまとめると、ゴルフの下2つのグレードと同じ走りのスペックを持った日本車は幾つかある。ヴィッツRS、フィットRS、スイフトXS、スイフトRS、スイフトスポーツのBセグ5台だ。ただドライブフィールは良いが、内装ではさすがにゴルフには勝てない。249.9万円のゴルフに内装も含めて対抗するには、アクセラ・インプレッサ・オーリスを持ってくる必要がある。この3台の最上級グレード(199.5~225万円)ならゴルフに完勝できるが・・・。もうちょっとお金を出せばアテンザ・レガシィ・マークXが買えてしまうけど。

  ということで、ゴルフに対抗するモデルとして一番インパクトがあるのはスズキのスイフトだと結論したい。 追伸:先ほどフィットに対抗したMCがありエンジンが全般的に燃費寄りに変更になったのだそうだ・・・あちゃ〜・・・。


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2013年9月12日木曜日

フィット「最善を尽くしたクルマ」

  日本車のデザインには個性がないとよく言われる。軽自動車・コンパクトカー・ミニバンのデザインが各メーカーともに似たり寄ったりで、トラックを除く乗用車の大部分をこれらのクルマが占めるからそう感じるのも無理はない。対比される輸入車の多くは高級車であるからより一層、日本メーカーのデザインはダメだと感じる人もいるようだ。現実にはどこの国でも平凡なデザインの実用性の高いクルマが多く目立つし、モーターショーを見ても日本メーカーのデザイン力が特に低いということはないと思う。

  日本車の中心がこの10年で軽・コンパクト・ミニバンへ大きくシフトしたことで、街の風景が劣化しているという厳しい意見もある。ただこれも軽・コンパクト・ミニバンのデザインに対して、観る人がどれだけ「リテラシー」を持っているかによって大きく左右されるものだろう。同じコンパクトカーを観てもその感想は大きく分かれる。大手メーカー各社のコンパクトカーの現行モデルはいずれもデザイナーの意図が少なからず感じられる。マーチ・ヴィッツ・アクア・デミオ・スイフトなどはコンパクトカーデザインの壁(限界)を打ち破りつつあり、世界の最先端を歩んでいると言える。

  ここまでコンパクトカーのデザインで白熱している自動車生産国はおそらく日本だけだろう。そんな最激戦区の日本で最古参のデザインにも関わらず、常に「勝ち組」と言える売上を叩き出し続けたクルマがホンダのフィットだ。前述のライバル各車と比べると、決してデザイン面での強烈な個性を持っているわけではなく、むしろ保守的で「機能美」を体現するスタンスに依っている。ちょっと抽象的な表現になってしまったが、要はライバル車と比べて車内が広いだろうと容易に想像できるデザインになっているということだ。実際に車内の容積はクラス随一の広さを誇る。

  日本のコンパクトカーがカッコ良くなって、ユーザーの満足度が上がることは、とても結構なことなのだが、なんかとても大事なことを忘れている気がする。コンパクトカーはあくまでも簡易的なクルマであり、どんなに頑張ってみたところで高性能なGTカーをこよなく愛するユーザーからは見向きもされないのが現実だ。日本では軽自動車と普通車の区分があるが、コンパクトカーはトップエンドのGTカーと軽自動車のどちらに近いかといえば、その設計はほぼ軽自動車と同じ程度に簡素化されている。コンパクトカーに乗るくらいなら税金の安い軽自動車を選択するのも自然なことだ。

  特に最近のデザインを強調したコンパクトカーが実用車の本分を忘れているとは言わないが、日本専用モデルである軽自動車の進化に比べて「ゆるやかな」上昇という印象がある。ハイブリッド専用モデルのアクアの売れ行きは目覚ましいものがあるが、果たして燃費性能以外の進化をアクアがもたらしたか?というと疑問が残る。普通車のボトムエンドとして驚異的なコストカットの痕だけが痛々しく残り、それでも軽自動車よりも格上だという建前と、100万円〜の本体価格だけが取り柄のクルマだ。

  価格で競争するメーカーと価格でえらぶユーザーのどちらが悪いというわけではないが、本体価格が100万円のクルマに多くは期待できない。もし中古ドイツ車で100万円という価格なら10年10万キロは軽く超えていてエアコンは死んでいる個体が頭に浮かぶほどだ。そんな価格で新車が買えてしまうということは、たいして素晴らしいことではないように思う。ましてや100万円のクルマのデザインを改良してスペシャリティカーを作ったとしても、ユーザーの満足度は決して上がらないだろう。

  やはり本体価格が100万円台のクルマは第一に実用的であるべきだと思う。4人乗車でも外から見て狭っ苦しく見えないデザインこそが、コンパクトカーに求められる重要な要素だ。その視点で考えると、フィットに加えて日産キューブが人気を博す理由もなんとなくわかる気がする。デザインが良いクルマを選ぶと同時に、実用的であるクルマを選択することが、クルマユーザーとしての「良識」と言える。

  結論を言うとホンダ・フィットは「良識」であり「正義」だ。実用性に優れたボディ設計だけでなく、Vテックで5MTという走りのグレードも選ぶことができる。コンパクトカーがしばしば批判される原因の走行性能の低さも、選択次第で回避できるようになっている。やや暴論かもしれないが、家族4人で走るなら「アクアお父さん」よりも「フィットお父さん」の方が常識人だ。アクアやデミオに家族4人を詰め込むのは端から見てイケていない。

  コンパクトカーを嫌って「ヴェルファイアお父さん」や「BMW5お父さん」の選択もいいけど、なんか気負っている気もする。最近では「CX-5お父さん」と「ジュークお父さん」が増えているようだが、家族4人乗車ならSUVという選択は極めて妥当だ。フィットにはそんなSUVが持つ「家族車」的な機能美も備わっている点を評価したい。いよいよFMCを迎えより実用性の度合いが増したようだが、あれ?スタイルが先代と比べてイマイチと感じるのは私だけだろうか?

 

2013年8月12日月曜日

スカイラインクロスオーバー 「お手軽で希少な高級モデル」

  ここ数年、軽自動車の割合が大きく増えていて、普通車の新型の発売がとても少ない。トヨタ以外の全てのメーカーは海外市場を睨んだもので、日本の実情に合っていなかったりする点が目立ち、なかなか気に入った一台を見つけるのが難しくなってきている。これは良いかもと思うモデルは瞬く間に大ヒットして街中では珍しくない存在になってしまうので、300万円以上も使って買うとなるとあれこれ躊躇してしまう。

  トヨタブランドの上級グレード車はクラウンもマークXもどこの街でも見られるありふれた存在である。ドライブを趣味にしている人にとっては、いいクルマなのは分かっているが、流通台数を考えるととても買う気になれないクルマだ。そんなトヨタにひっそりとラインナップされているのがマークXジオだ。

  このクルマはマークXのワゴンという位置づけなのだが、いろいろと突っ込みどころがある。マークXはV6エンジンのFR車をどこよりも安く提供することを念頭に置いたクルマだが、このマークXジオはFFで主力エンジンは直4の2.4Lエンジンを使っている。トヨタがイギリスから逆輸入しているアベンシスの上級モデルといっていい内容だ。なぜマークXというネーミングなのかさっぱり分からない。

  このマークXジオのライバル車と見做されているのが、スカイラインクロスオーバーだ。ライバルと言っても本体価格が200万円台のマークXジオと400万円を超えるスカイラインクロスオーバーはいくらなんでも車格が違う。マークXジオの現実的なライバルはホンダのオディッセイだろう。スカイラインクロスオーバーはスカイラインを名乗るだけあって、プラットホームが共通のFRで3.7LのV6エンジンを使った高級車だ。もちろん日本では需要がほとんどなく、アメリカ市場での展開を念頭に開発されている。

  現行スカイライン(V36系)はセダンはライバル車にくらべやや小振りで、クラス最高級(アメリカではメルセデスCやBMW3よりも高価な設定)にしてはちょっと見栄えがしない。クーペはトレッドを拡げてよりスポーティに仕上がっているが、その趣味性の高さが鼻に付くという意見もあるかもしれない。そこでよりナチュラルなスカイラインとして、このクロスオーバーが設定されているようだ。日産のPRのマズさからほとんどの人に認知されていないクルマだが、ほぼBMW X5と同等以上の性能とデザインで400万円台前半(X3より安いくらい)なのだからもっと売れてもいいように感じる。

  BMWのX3やX5やアウディQ5やQ7を買うくらいならスカイラインクロスオーバーの方が断然にかっこいいくらいだから、このクルマをほぼ日本で見かけないのは残念なことだ。結局のところ、SUVとしての本質を求める人はフォレスターやCX-5に流れてしまい、3.7LのV6搭載ならセダンやクーペもしくはフェアレディZの方が高速走行に適しているし、ファッション性とブランド力を求めるSUV乗りはBMWやアウディに行ってしまうのだろう。

  もう一度念押ししておくと、スカイラインクロスオーバーはあらゆるシーンで活躍できるバランスの取れたデザインであり、その洗練度と走行性能はBMW X5やアウディQ7をも軽々と上回る。SUVに高級さを求めるのがナンセンスだと考える人には用のないクルマだが、高級ホテルに乗り付けられるし、となりにX5やQ7が来ようともこちらの方が性能は上なのだから堂々としていられる素晴らしいクルマだ。フォレスターやCX-5では高級ホテルにはなかなか乗り付けられないと分かる常識人にはぜひオススメしたい一台だ。



  

  

2013年7月15日月曜日

VC36スカイラインクーペ 「現代に残る”ナンパ車"で幸せな人生を・・・」

  VC36スカイラインクーペは確実にモテる。おそらく独身男性にとってもっとも「コストパフォーマンス」に優れたクルマだと言える。「ナンパ車」と言ってしまうとやや下品なイメージになってしまうが、職場やいろいろな出会いの中で気に入った女性がいればいつでもこのクルマでエスコート出来る。自分自身に多少自信がない人でもこのクルマで着飾って、誠実そうに振る舞っていれば簡単に素敵なデートが楽しめるだろう。

  近頃は公共交通機関を使ってのデートはまるで楽しめなくなってきた。東京のどの街に行ってもお客が集まるところは「商業主義」の匂いしかしない。軒を連ねる飲食店はどこの街でも見かける大規模チェーンか、必死にテナント料を払うために田舎者にボッタくり料金を提示するおしゃれなカフェやレストランばかりだ。

  ちょっと良さそうなお店は恐ろしいほどに混んでいるし、オバさん達がつるんでデカい声で話していたりして雰囲気もなにもなかったりする。再訪したいと思うお店なんてほとんどないし、落ち着いてて(混んでない)いいなと思うお店は次に来るときは大抵は閉店している。そもそも駅からすぐのところに美味しいお店なんてないというのが経験上感じることだ。

  もはや東京に住んでいるならクルマを持っていないと、楽しい人生は送れないとすら思う。それでもクルマなんて要らないという人ももちろん多かったりするが・・・。外で食事をするならクルマに乗っていくところでないと満足はできない。それでも回転寿しや食べ放題のファミレスはしっかり避ける。家族連れが大勢いるようなところで食事をしたいなどとは思わない。食事をする場で平気でガキを騒がせている親なんてザラにいる。大抵は一家揃ってバカみたいな恰好していて、視界に入るだけでかなりうっとおしい。

  ちょっと話が反れたが、要はバブルが崩壊して東京の真ん中にも低所得者は溢れていて、さらに過密化が進んでいる。当然ながらよっぽどの高級店で無い限り、駅前の飲食店で食事なんて罰ゲームみたいなものだ。休日にわざわざご飯を食べに都心に出向く人はよっぽどの田舎者か変わり者だ。おそらくあなたのデートの相手も同じようなことを思っているはずだ。休日のデートに電車に乗せられて雰囲気もなにも無いお店に連れて行かれても、その関係になんら進展は望めないだろうし、次回はもうないかもしれない。

  逆にスカクーに気になる女性を乗せて、美味しいご飯を食べに行けば、もはやその女性はあなたの年齢や容姿などはあまり気にしないようになるだろう。ロードサイドの飲食店の駐車場でよく見かけるのが、VC36スカクーと50歳前後の男性と20代の女性という組み合わせだ。男性の身なりは大抵はラフな感じで、このクルマとドライブがなければとてもデートには辿り着かない様子だ。

  周囲から見ればちょっと違和感を感じることもある。大抵は男性側に清潔感がなかったりする。もっと清潔感がある人が乗ればもっといいクルマに見えるだろうにと思うが、どうもこのクルマには「スケベじじい」ばかりが目を付けるらしい。どんなにハゲててデブだろうが、いつも女性と楽しくデートしている「ナンパ師」達がこのクルマは使えると感じているのだろう。このクルマさえ乗っていれば、ハゲもデブも全て「セクシー」に写るようだ。
 
  つまり結婚相手が見つからない中高年の男性は、わけの解らない結婚相談所に大金を払うより、このスカクーに注ぎ込んだ方が効率がいいとすら思う。このクルマに乗っても上手くいかないようなら、結婚相談所などまったく意味がないだろう。しかもこのスカクーは中古車で良ければ200万円以下で良いものが手に入る。さらにスカイラインは新車よりも中古車の方がサスが柔らかくて乗り心地が良かったりする。

  どこにドライブに行けば良いか? ありきたりだが国道138号線を走ればいいと思う。沿線にはオーシャンビューテラスのリッチなレストラン(稲村ケ崎付近)もあるし、鎌倉に行けば「丸山亭」のような気の利いたレストランもある。さらにオススメしたいのが、葉山にあるステーキハウス「そうま」だ。とりあえずこの3店ならどこに連れて行っても、女性に感動してもらえるはずだ。幾らかお金はかかるが、どのお店もとても満足感が高く決して損をした気分にはならないだろう。

  クルマならなんでもいいというわけではない。中高年の男性を最高にセクシーに魅せるクルマがこのVC36スカイラインクーペだと思う。そしてこれに代わるクルマを見つけるのもなかなか難しい。このクルマに匹敵するのはポルシェ911(996,997,991)くらいだろうか。それくらいにこのクルマは素晴らしい「性能」を持っている。

  

  

  
  

2013年7月3日水曜日

ホンダCR-Z 「遅かれ早かれスポーツカーはHV。先見の明だけでも惚れる。」

  会社員のCさん(27)の愛車は「ホンダCR-Z」だ。発売1ヶ月で10000台の注文があった話題のクルマだったということもあり、今では2年落ちの程度の良い中古が150万円以下で買えてしまう。今狙い目のとてもお買い得なクルマだ。Cさんもクルマにあまりコストを掛けたくないので、中古で購入した。廉価グレードのベータレーベル・約2万km走行で140万円だった。

  このクルマは一般には「スポーツカーには程遠い内容」などと酷評されたりしている。しかしCさんはこう言う「クルマ評論家ほど当てにならないものはない。彼らが酷評する『スポーツカーじゃないクルマ』は実際に所有すると楽しいクルマが多い。」
50歳代以上が多数を占めるクルマ評論家の「価値観」など、Cさんのような若くて優秀な世代にはまったくと言っていいほど響かない。

  実際にクルマを取り巻く環境が大幅に変わったとされる2000年代前半のクルマ評論を今紐解いてみると、そのあまりに「空っぽ」の内容は酷い限りだ。試しにアマゾンで価格1円で並んでいるような本を買って読んでみるとよくわかる。割と好きなライターの著作物だからといって追いかけて読んでみると、その痛すぎる内容に絶句したりする。別に彼らが特別に悪いわけではない、技術発展の目覚ましい分野の著作物はどうしてもこうなってしまうようだ。

  それでも当時の若者の為のクルマをことごとく叩きのめした2003年頃の評論はその痛々しさがかなり「強烈」だ。トヨタが若者向けに発売した「アルティツァ」やヤマハ製の190psのNAエンジンを搭載した「カローラ」(フィールダー・ランクス)などを、発売中止になったスカGやRX-7、シルビアを引き合いに出して「酷評」するものがとても多い。今の感覚からすると、シルビアはともかくスカGやRX-7と比較するクルマではない。それにアルティツァや高性能カローラは200万円程度の価格設定はかなり魅力的に思える。当時はマークⅡやスカイラインがまだまだその価格帯以下のクルマだという感覚があったようなので割高に感じるのも無理はないが・・・。

  10年前の「狂騒」はもう評論家の間ではとっくに過去のモノになってしまったようだ。今もなお何の反省もなくトヨタ86やらホンダCR-Zに牙を剥くライターが後を絶たない。ハッキリ言ってこんな評論は、これからクルマ人生をスタートさせる若者にとっても「百害あって一利なし」だ。いったい過去のどのクルマを持ってきたらトヨタ86の性能に対抗できるというのか? せいぜいマツダRX-7やRX-8といった世界的なスポーツカーと比べない限り、トヨタ86が評価を落とすことはないだろう。それでも多くの若者がそんな根拠無しの評論を読んで「シルビア」だの「スープラ」だのといったかつてのスポーツカーに、最初から手を出すケースがあるようだ(もちろん状態の良いモノは少ないから、乗りたい人は焦るのだろうが・・・)。

  Cさんは思う。シルビアやFD(RX-8)の中古車を150万円で購入したとしても、状態の良いものはほとんど無いので、満足に走らせられないだろうし、ちょっと走れば何らかのトラブルに見舞われてしまう可能性が高い。だったらその150万円を使って、もっと程度の良いマツダロードスターやCR-Zを買ったほうが絶対に「効用」は高いし、維持費もかなり安く済むだろう。無理してFDを購入しても、まったく運転を楽しめなくて「モニュメント」と化している人も多い。この「置物」に数百万円を費やすような若者に幸せなカーライフが訪れるとはとても思えない・・・(私の知り合いにも5年でたった3000キロしか走っていない丸目のインプSTIを所有している方がいる)。

  なぜカーメディアはいつまでも古くからの読者に媚びてFDやらインプSTIやらにこだわるのだろうか? そしてどの口で「クルマ離れの原因はメーカーや行政にある」などと放言するのだろうか? 明らかに「若者のクルマ離れ」を招いているのは、あなた方の「非社会性」「非常識」の塊のような評論が、若者達に誤ったクルマ文化を伝えたという認識はあるのだろうか・・・。

  CR-Zやロードスターの性能に不満を感じる道なんて日本を走る限りはまずあり得ないだろう。ATでもパドルシフトやスポーツモードが付いているのだから、低速ギアできっちりとエンジンを回してあげれば、R35GT-Rにだってそう簡単には煽られないだろう。しかも峠に入ってしまえば、300ps以上のクルマよりも断然に楽しく走れる。もしこのクルマがつまらないという人がいるならば、クルマの楽しみ方が良く分かっていないのではないかと思う。そういう大切なことをしっかりと伝えることがカーメディアの使命だと思うのだが・・・。



2013年6月29日土曜日

ギャランフォルティス・ラリーアート 「逃げ足抜群というのは立派な性能だ」

  深夜の幹線道路を走っていると、ガラガラの道路なのにやたらと車間を詰めてくるクルマがたまにいる。信号が多い区間だとやたらと纏わりついてくるくせに、しばらく信号がない区間になって、さあ走ってやるよと思ったら全然付いてこなかったりして拍子抜けしたりもする。中にはドライバーが明らかに若くて、軽自動車を雨が降っている中でホイールスピンさせながらも「必死」で走ろうとする迷惑なヤツもいる。

  日本の自動車販売の大多数を占めるクルマはリアサスが独立式ではないので、そういうクルマが雨の中で無理な疾走をしているのを見ると、すぐに近くから離れたいという欲求に駆られる。スローダウンしてしまえばいいのだが、そういうヤツは先に行かせると意味不明にノロノロ走り出すので始末が悪かったりする。高速道路で追い越しておいてから90km/hくらいで走り始める輩に似ているかもしれない。

  速いクルマなんてそんなに興味はないのだけど、こういう「迷惑行為」への防衛手段としての抜群の加速性能を持っているクルマは魅力だ。面倒なクルマがいたらさっさと信号がないセクションで逃げきってしまえばいい。乗り出しで400万以下で買えるクルマでこの手の性能を有するモデルは探せば今でも意外に多い。

  輸入車だと・・・①ゴルフGTI(211ps&車重1400kg) ②ポロGTI(179ps&車重1210kg) ③ミト-クアドリフォリオ-ヴェルデ(170ps&車重1250kg)

  国産車だと・・・①ギャランフォルティス・RA(240ps&車重1580kg) ②MSアクセラ(264ps&車重1450kg) ③WRX STI specC(308ps&車重1420kg) ④86/BRZ(200ps&車重1470kg)

  輸入車勢のほうが比較的に小型のボディで、車幅からくる心理的な圧迫感は少なくて、用途としては向いているかもしれない。だがここは初動加速に優れる(信号が変わったらズバッといける)AWDの三菱かスバルを選択したほうが「安心感」が増すように思う。ただ「WRX STI」はスバルブルーと仰々しいリアスポイラーで、大人げない加速をするのもちょっと小っ恥ずかしい。スバル自慢の究極のショートストロークから繰り出される超絶レスポンスで軽ターボをぶち抜くなんて、人道的に許されるのか・・・。

  ギャランフォルティスRAはもっと評価されてもいいクルマだと思う。新車でたったの350万円(中古なら3年落ちで200万円以下!)しかしないが、アウディのクワトロと同等以上の性能があるのだから、これはお買い得に間違いない。フロントマスクも専用設計でカッコいいし、ランエボのベース車両なのでサスもいいものが使われている。敢えて欠点を上げればハッチバックもセダンもリアデザインがイマイチかな・・・。



  

 

2013年6月26日水曜日

トヨタSAI 「消えるトヨタに名車あり・・・」

  自他ともにクルマ好きを自認するBさんの自慢の愛車は・・・「トヨタ SAI」だ。発売当初はこのクルマに対して懐疑的(むしろ批判的)だったが、北米市場でレクサスが「HS」の販売を取りやめた辺りから、徐々に考えが変わってきた。北米ではプリウスは日本より高く販売されているが、レクサスは北米の方が相当に安い(日本のレクサス価格はアメリカ人にとっては理解不能)。そのレクサスのラインナップからさりげなくHSが消えたのだ。

  トヨタはHSの北米撤退について販売不振を理由に挙げているが、それならば日本市場のみ販売を続行する意図が不明だ。北米のレクサスにはESというFWDのセダンがあり、ESにもハイブリッドが設定されている($40000以下で格安だ)というのもあるだろうが、なんか「キナ臭い」感じがしないでもない。もしかしたら「HS」は北米価格では採算が取れないほどの高コストなクルマなのではないかとBさんは睨んでいる。日本価格ならおそらく利益はでるだろうが、ESの下のカテゴリーになる北米ではかなりタイトな価格設定を余儀なくされる。

  さらにBさんの頭をよぎったのが、北米のレクサスESに使われているHVシステムだ。これはトヨタブランドのカムリと同じ設計のもので、日本市場でもクラウンやレクサスISにも投入されてトヨタがまさに「拡販」を目指しているシステムだ。トヨタが「店じまい」しつつあるHSのシステムとトヨタが「拡販」を目指すカムリのシステムは一般には後者の方が優位なシステムと言われているが、果たして本当だろうか? 加速性能と燃費性能に優れているからと言って「優位」と結論付けてしまっていいのだろうか?

  実は「SAI」を選んだBさんにも「確信」は一切ない・・・。長年の勘だ。2000年以降のトヨタの「店じまい」は常に高コスト体質の「改善」にリンクしているように思う。2000年当時発売していたトヨタ車が今同じ価格でリバイバルされれば、大ヒットするであろうクルマはたくさんあるのだ。「AE111カローラレビン(4A-GE)」や「E120H型カローラランクスZエアロ」など絶対に当時の価格では販売できないだろう。今のトヨタのラインナップを見渡してみて、2000年頃の高品質時代の名残と言える「お宝モデル」は、この「SAI」と「GRX130型マークX(G's)」くらいじゃないだろうか? この2台ともに発売当初は取るに足らないと思っていたが、今や「一周回って」カッコ良く思えてきたくらいだ・・・。




  いよいよカローラにもハイブリッドモデルが登場し、トヨタブランド内でもハイブリッドモデルによる競争が激化してくることが予想される。しかし作る側のトヨタからしてみたら、中身が同じクルマをできるだけ多く作りたいというコスト面でのインセンティブが働くので、プリウスやアクアに使われているシステムを他の車種にまで広げていくのだろう。当然ながら数パターンが存在するトヨタのハイブリッドシステムも次第に淘汰されていって、高コストな体質のシステムは次々に消えていく運命にある。

  トヨタSAIとレクサスHSは、トヨタが初期に作り上げた2.4L直4エンジン+ハイブリッドのシステムを使っている。このシステムはその後の車種には投入されなかったので、今後は生産が打ち切られ両車ともにラインナップ落ちする公算が大きい。まあトヨタが生産をやめてしまうくらいだから、大したシステムではなかったのだろうと大半の人は思うかもしれない。しかしバブル期以降、生産が打ち切られた日本車の多くがその後その存在を惜しまれて、後になって評価が急上昇することが結構あったりする。トヨタ車の場合だと、レクサスの日本導入時に消滅した、アルティツァやアリストターボがその後の中古車市場で高値で取引された。この10年に限定すれば「消えるトヨタ」はかなりの確率で「買い」なのだ・・・。


↓最近は3代目プリウスも「酷い」とまでは思わなくなってきた。それ以上にこのSAIのデザインは・・・なんというか「含蓄」がある。

2013年6月20日木曜日

マツダ・デミオ 「デザインとハンドリングこそが欧州NOWだ」

  

  中堅商社に勤めるAさんの愛車は「マツダ・デミオ」だ。600万円を超える年収を考えると、ちょっとシンプルなクルマな気もするが、Aさんにとってはこだわりの選択だ。20代のころはスポーツクーペやセダンへの憧れもあったが、約3年におよぶイギリスでの海外勤務を経験するや、クルマへのイメージが一気に変わった。イギリスではフォード・フォーカスに乗っていた。イギリス人の同僚もボクスホール(英国オペル)のアストラやアギーラといったハッチバックに乗っている人が多かった。アギーラはスズキ・スプラッシュのOEMだ。

  イギリスでもセダンやスポーツクーペを見かけるが、乗っている人は大抵はアッパークラスの人々だ。階級社会のイギリスでは、上流階級の生活そのものに特に興味は持たない流儀のようで、オフィスに囲われた「労働者」でしかない同僚達はメルセデスやBMWに興味などまったく示さない。日本人のように「いつかはクラウン」とばかりに年相応に高級車に乗るといった発想はまったくないのだ。よってセダンの車種は日本以上に限られている。しかしその分BセグやCセグにはプジョーやVWといった日本でもおなじみのメーカーだけでなく、ダチアやキアといった10000ユーロを大きく下回る金額のクルマを作るメーカーまで豊富に揃っている。

  日本に帰って来たAさんは、中途半端な高級車が並ぶ渋谷の道玄坂を見て、日本のクルマ文化の浅はかさを痛感した。「完全に社会的機能を失ったガラクタ」が渋滞する風景(日本の都会の風景を破壊している)に苛立ちしか感じなかった・・・。「絶望的に醜い旧型メルセデスと、奇妙なまでにギラついている新型メルセデスと、ブランドの前に判断能力をなくした日本のユーザー」どこまでも絶望的な状況だ。おそらくヨーロッパ人が見ても同じ感想を漏らすだろう。Aさんは日本の「不健全」なクルマ文化に背を向けて、イギリスで乗っていたようなクルマを探した。欧州で活躍する日本車も少なくないので、その中からスズキ「スプラッシュ」とマツダ「デミオ」を候補にした。どちらも欧州で十分に通用するハンドリングとスタイリングを備えた素晴らしいクルマだ。




  「デカいクルマは東アジア的な価値観の投影にすぎない」ということは現代の日本人も徐々に理解しつつあるはずだ。それでも日本人のクルマ嗜好はユーザーの高齢化という現実の中で、簡単には変わらないだろう。大きくて頑丈で高出力のエンジンを持つクルマが間違いなく正義と言えた時代は10年前にとっくに滅びている。もはや、真剣にドイツ車の優秀性など語るモータージャーナリストは少なくなった(ベストカーにはまだまだいるが・・・)。小型エンジンも急速に高性能化して来て、安価なクルマでも十分な加速性能が得られるようになった今では、街中では大型のセダンより軽自動車の方が立ち上がるのが早いのは常識だ。

  さらに車重が軽自動車の2倍の1500kg以上もあるクルマは当然ながら、一旦スピードに乗ってしまったら、あらゆる局面での「制動」で軽自動車などの軽いクルマよりもたくさん「マテリアル」を消費しなければならない。同時に重いクルマは止まるにも曲がるにも大きな労力が必要だ。いくら頑丈といっても100km/hで事故ればメルセデスSクラスでも無事ではすまない。そんなこともあり、海外では軽量化技術が進んでいる日本車が圧倒的に大人気だ。要は「軽ければ軽いほど、優秀で安全なクルマ」だということだ。


↓その性能はトヨタも認めていて、北米版ヴィッツ(ヤリス)はデミオベースになることが決定。

2013年6月18日火曜日

RAV4 「なんだかんだいってもトヨタは北米販売車がお買い得」

  日本で販売されるトヨタブランド車は、トヨタ傘下のさまざまなメーカーがコラボして企画されたクルマが雑多に含まれていて、その価格設定もよくよく見ると不整合な点がいくつも出てくる。簡単に言うと、「お買い得なクルマ」と「絶対に買ってはいけないクルマ」がごちゃ混ぜになっているから、よく調べて買ったほうがいいということだ。

  「どうすればお買い得なクルマが選べるのか?」最も端的にトヨタブランドの特徴を表すとすれば、「一番高価なマジェスタが一番お買い得で、一番安価なパッソが一番損をする」となるかもしれない。マジェスタはお買い得すぎてとうとうラインナップ落ちしてしまったようだ(まだ在庫車があると思うが)。600万円台でV8搭載&エアサス装備なんて夢のクルマだ。中古車はレクサスLSもだぶついているおかげで、さらにバーゲン価格になっているし、トヨタのV8は10万キロ走ってからが本領発揮という超絶クオリティの優良エンジンと言われ、30万キロを余裕で走ると専らの評判だ。

  マジェスタ以外ではどれががお買い得かと言うと、やはり北米でやたらと売れている「カムリ」と「RAV4」がコストパフォーマンスが非常に高く、全く損をしないクルマと言える。ただこの2台は極端な北米との価格差を抑えているので、トヨタとしては「旨味」が少なく日本であまりたくさん売れてほしくないような素振りも見え隠れする。カムリHVより「SAI」という高級ハイブリッドモデルの方をたくさん売りたいし、さらに高級なレクサス「HS」を売りたいと考えるのは当然だが、クルマの実力が価格にまったく比例していないので、北米では「SAI」は売られていないし、レクサス「HS」も撤退を余儀なくされた。

  トヨタの北米販売モデルとしては、かの地で幾度となく物議を醸しているプリウスに加え、アクアとヴィッツがある。この3台はカムリHVと違い、いずれも日本価格が北米価格を下回る「戦略価格設定」なので、ここ数年は日本での普通車販売TOP10の常連になっている(もちろんトヨタの宣伝力とエコカーブームの賜物だが・・・)。カムリHVは北米ベストセラーで、韓国COTYも獲得したトヨタのエース級の「スーパーセダン」なのだが、日本価格はやや高めなのが残念だ。

  トヨタのもう一台の北米ベストセラーが「RAV4」だ。このクルマは北米が主戦場なのにも関わらず、日本価格の方が安く設定されていて、トヨタブランドの「ワールドクラス」のクルマの中で実は一番のお買い得車だったりする。いくら日本市場でマツダ「CX-5」とスバル「フォレスター」が頂上決戦を繰り広げようが、北米ではどちらも「RAV4」の足元にも及ばない。確かにライバルのホンダ「CR-V」に販売面では上に行かれているが、CR-Vは日本市場では低スペックな2Lの日本専用モデルがやたらと高価格に設定されているので、お買い得感はまったくない。

  日本でも様々なSUVが売られているが、国産もドイツ車もデザインはどれも似たり寄ったりで、どのクルマも「洗練」という言葉はまったく当てはまらないレベルだ。性能面でもスバルの4WDだのマツダのディーゼルだのそれなりに個性はあるが、「直4の2.4Lで200万円」という直球勝負のトヨタRAV4の個性が一番際立っているように思う(トヨタは日本では勝負してないようだが・・・)。日本のユーザーがSUVに求める要素は、コンパクト・ミニバン・セダンを避けつつも、「居住性」を追求する点にあるようだ。居住性に関して世界でもっとも権威がある大衆ブランドといえば、間違いなく「トヨタ」なわけで、ミドルサイズSUVに関してはRAV4の「一択」という結論でいいのではという気がする。それでも日本では売れない・・・。


↓イヴォーグとかいう、狭っ苦しくて、安っぽいプレミアム感全開のSUVの何がいいのか?まったく理解できません。

  

  

2013年6月10日月曜日

トヨタ・プリウス 「イケメンならクルマは何だって構わない」

  日本で一番たくさん走っているクルマであろうトヨタのプリウスを、「プライベートカー」として「敢えて」買おうとする人(統計上は相当な数だ)には、それなりの「計算」があるのではないかと思う。それが月に100kmも乗らないユーザーだったならば、相当の「深謀遠慮」があるのでは・・・。

  デジタルコンテンツ開発会社を経営するAさん(30)は、大学卒業後3年間は大手の保守管理会社でSEを勤め、4年前に独立した。現在のSEは「空前のバブル」で大量採用・大量退職当たり前だ。能力の有無などはまったく問われず、大抵は3年目で事実上の「定年」を迎え、給料の安いフレッシュマンに職場を譲る羽目になる。そんなことは入社時から十分にわかっていたので、Aさんは3年後の独立に向けて着々と準備を整えていた。

  それでも、いざ「起業」となると自分の力で仕事を獲ってくるツラさは尋常ではなく、まったくもって順風満帆とはいかなかった。試行錯誤を繰り返し、アプリ制作に軸足を移して当面の売上を確保した。去年辺りから受注は捌ききれないほどに舞い込むようになり、かつての同僚たちを助っ人として雇い入れて乗り切ってきた。下請け中心なので、収益は割に合わない水準でしかなかったが、徐々にチームとして大きな仕事ができる組織が成り立っているのを実感しつつあった。

  その後、急成長を遂げていたゲーム産業で自主コンテンツの開発を本格化させると、まもなく事業は完全に軌道に乗った。SEの時代とは比べものにならないほどの高収入に浮かれて「高級輸入車」の購入も頭を過ったが、SE時代に大量に読んでいたビジネス書の一節が心に刺さっていて思いとどまった。いま自分がメルセデスに乗り始めたら、一緒に頑張ってくれた仲間達はどう思うだろうか? いま仲間達に疑念を抱かせるようなことをして、みんな離れていってしまったら、自分はただの愚か者だ・・・。

  今、Aさんはオフィス拠点の移転を考えている。最有力候補地は過疎化が進む徳島県だ。急峻な四国山地に阻まれて地デジ受信環境がよくない場所が点在し、この地では光ファイバー網の整備が地方にしては進んでいる。今ではIT企業にとっての好立地として注目を浴びていて、転入する企業も多い。大都市・神戸まで高速道路で1時間程度の場所なので、それほどの僻地というわけでもない。もっともITビジネスなので、社員全員がその地へ移転する必要はないのだが(そもそもオフィスもいらない・・・)。

  週末は神戸までドライブすることもあるだろうからクルマも必要だ。高速道路を使うので軽自動車ではちょっと都合が悪い。Aさんはトヨタのプリウスを買う事にした。徳島では軽自動車ばかりなので、プリウスに乗ることへの抵抗は意外に少ない。そもそも高級車など乗っていたら完全に浮いてしまう。「燃費」などは完全に後付けの理由でしかない。大都市圏の密集住宅地では繁殖しすぎて「殺風景」以外の何者でもないプリウスだが、徳島の田園風景には「近未来」デザインが良く映えるだろう・・・。「乗る場所を自分で判断できない『センスのない人』は絶対に成功しない」Aさんはそう確信している。



(この話はすべてフィクションです。実在の個人・団体とは一切関係がありません。)


↓やはり「イケメン」にはプリウスが似合う・・・。