2013年6月20日木曜日

マツダ・デミオ 「デザインとハンドリングこそが欧州NOWだ」

  

  中堅商社に勤めるAさんの愛車は「マツダ・デミオ」だ。600万円を超える年収を考えると、ちょっとシンプルなクルマな気もするが、Aさんにとってはこだわりの選択だ。20代のころはスポーツクーペやセダンへの憧れもあったが、約3年におよぶイギリスでの海外勤務を経験するや、クルマへのイメージが一気に変わった。イギリスではフォード・フォーカスに乗っていた。イギリス人の同僚もボクスホール(英国オペル)のアストラやアギーラといったハッチバックに乗っている人が多かった。アギーラはスズキ・スプラッシュのOEMだ。

  イギリスでもセダンやスポーツクーペを見かけるが、乗っている人は大抵はアッパークラスの人々だ。階級社会のイギリスでは、上流階級の生活そのものに特に興味は持たない流儀のようで、オフィスに囲われた「労働者」でしかない同僚達はメルセデスやBMWに興味などまったく示さない。日本人のように「いつかはクラウン」とばかりに年相応に高級車に乗るといった発想はまったくないのだ。よってセダンの車種は日本以上に限られている。しかしその分BセグやCセグにはプジョーやVWといった日本でもおなじみのメーカーだけでなく、ダチアやキアといった10000ユーロを大きく下回る金額のクルマを作るメーカーまで豊富に揃っている。

  日本に帰って来たAさんは、中途半端な高級車が並ぶ渋谷の道玄坂を見て、日本のクルマ文化の浅はかさを痛感した。「完全に社会的機能を失ったガラクタ」が渋滞する風景(日本の都会の風景を破壊している)に苛立ちしか感じなかった・・・。「絶望的に醜い旧型メルセデスと、奇妙なまでにギラついている新型メルセデスと、ブランドの前に判断能力をなくした日本のユーザー」どこまでも絶望的な状況だ。おそらくヨーロッパ人が見ても同じ感想を漏らすだろう。Aさんは日本の「不健全」なクルマ文化に背を向けて、イギリスで乗っていたようなクルマを探した。欧州で活躍する日本車も少なくないので、その中からスズキ「スプラッシュ」とマツダ「デミオ」を候補にした。どちらも欧州で十分に通用するハンドリングとスタイリングを備えた素晴らしいクルマだ。




  「デカいクルマは東アジア的な価値観の投影にすぎない」ということは現代の日本人も徐々に理解しつつあるはずだ。それでも日本人のクルマ嗜好はユーザーの高齢化という現実の中で、簡単には変わらないだろう。大きくて頑丈で高出力のエンジンを持つクルマが間違いなく正義と言えた時代は10年前にとっくに滅びている。もはや、真剣にドイツ車の優秀性など語るモータージャーナリストは少なくなった(ベストカーにはまだまだいるが・・・)。小型エンジンも急速に高性能化して来て、安価なクルマでも十分な加速性能が得られるようになった今では、街中では大型のセダンより軽自動車の方が立ち上がるのが早いのは常識だ。

  さらに車重が軽自動車の2倍の1500kg以上もあるクルマは当然ながら、一旦スピードに乗ってしまったら、あらゆる局面での「制動」で軽自動車などの軽いクルマよりもたくさん「マテリアル」を消費しなければならない。同時に重いクルマは止まるにも曲がるにも大きな労力が必要だ。いくら頑丈といっても100km/hで事故ればメルセデスSクラスでも無事ではすまない。そんなこともあり、海外では軽量化技術が進んでいる日本車が圧倒的に大人気だ。要は「軽ければ軽いほど、優秀で安全なクルマ」だということだ。


↓その性能はトヨタも認めていて、北米版ヴィッツ(ヤリス)はデミオベースになることが決定。

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